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2014/04/12 (Sat) 指無し姫は生きる 1

件のカウンセラーとの出会いを語るなら、直前の出来事から書いておかなければならない。
問題のカウンセリングに嵌りこんでいった経緯、支配から逃れられなかった理由、そこから抜け出したきっかけ、抜け出した私が今こうしてブログを書いている理由。全て一本の背骨が通った一繋がりの物語になっている。
この時期に私と関わってくれた誰が欠けても、今日の私はない。

2008年から10ヶ月間受けたカウンセリングから約4年、壊れたまま生きてきた日々を書く。
崩壊し続ける「私」の物語。
死ななかったから、書ける。生き延びる限り、書く。


::::::::::::::::::::


2008年10月、TBS報道特集NEXTで「自分を傷つける女たち(境界性人格障害)」というドキュメンタリーが放送された。
私は、境界性パーソナリティ障害(以後、略語のBPDと記す)の患者の一人として出演した。
私の私生活から通院、BPD特有の行動化の様子などが、テレビで流れた。
私はこんなブログを書いている以上、覚悟があった。病気への理解が広がるなら、私のプライバシーは要らない。どうせ明日生きているか分からないのなら、自分の全部を出してから死のうと決めていた。
だから、モザイクはなしにしてもらった。番組に使われることはなかったが、交際していた男性が撮影したSMプレイ写真まで提供した。
私は、私自身が病気への理解に必要と思うものを必要なだけ提供した。



取材の話が来た当初、テレビ関係の人間というだけで私は全く信用せず打ち合わせのテーブルに座ったが、相当な時間をかけて知ったディレクターN氏は、信頼に値する人物だと感じた。
その彼から、事前に説明を受けていた。
全国誰もが見るテレビに、精神障害者として顔出しで出ることのメリットは、はっきり言って一つもない、と。しかし、当事者の表情まで放送出来るなら、より伝わることは間違いない。

私は、誤解されやすいこの病の苦しみが、最善の形で伝わって欲しいと願っていた。

モザイクなしで良いです。そう言ったら、ディレクターは驚いた。
「もうちょっと考えた方が良いですよ。知り合いや家族が見るかもしれない。途中で気が変わったら言ってください。いつでも処理しますから」と言った。
気は変わりません、と私は答えた。

自分がブサイクだろうがキモかろうが、どうでも良い。それが私の生だ。生きることは苦しくて、下らなくて、なかなか死ねなくて、諦めが悪くて、みっともなくて、少しでもましに生きようと今日明日を足掻くしかない、それが私の偽りない事実だ。格好つけても仕方ない。ブログでやっていることと何も変わらない。どんな場でも私は繕わずにいられるのか。自分を試してみたい気もあった。

事実、最後まで後悔しなかった。涙にまみれて醜態をさらす自分の顔を画面いっぱいに眺めても、その気持ちは変わらなかった。


放送直後から、ブログの来訪者が激増した。
番組の感想が、コメント、鍵付きコメント、メールを通して数え切れないほど私の元に寄せられた。書き込み主は、主に同じようにBPDで苦しむ当事者の方々だ。

当時まだまだ認知度の低かったBPDのドキュメンタリー番組が放送されただけで、価値があった。そのことを評価する声を頂いた。
一方で、「BPDの苦しみはあんなものではない」「私たち当事者はあんなことが言いたいわけではない」といった批判的な声もあった。
一当事者に過ぎない私のブログのコメント欄に、制作サイドへの批判を書き込んでも当事者の声はどこにも届かない。憂さ晴らしのように感情任せに批判してくる鍵コメントやメールが増え続け、対応しようのない私は何度もダウンした。孤独だった。

力を振り絞り、記事を書いた。
意見があれば直接、実名でテレビ局へ感想を送ってください。当事者の声こそ最も価値がある。実名こそ価値がある。

その記事に応えて、何人もの方が実際に動いて下さった。実名で感想を送りましたと連絡くださった。倒れこんだベッドの中で報告を受けて、その勇気ある行動に心から救われ、泣いた。

この時の体験が、その後の講演活動に繋がった。
醜悪だと笑われようがが何だろうが、とにかく自分のありのままで人の前に立つこと、当事者が当事者の声と言葉で自らを語ることの大切さを実感した。私の捨て鉢の勇気に応えてくださる方々がいることを知った。


「番組は番組制作者の作品に過ぎない、当事者の声ほど説得力を持つものはない、美鳥さんが伝えたいことは自分自身で伝えるべきだ。」
そう言ったディレクターN氏の言葉も、その後の私の道を決定的にした。
当時の私は、暇さえあればSMプレイの話ばかりして、頻繁にボーダー患者ならではの二極論をぶつ、分別のないクソ生意気な小娘だった。それでも、1人の人間として対等に対話してくれた。N氏からは、日本のこと海外のこと、宗教のこと動物のこと昆虫のこと野球のこと、数え切れない程多くのことを教わった。
人のプライバシーを最大に尊重することの大切さを教えてくれた人でもある。「マスゴミ」と揶揄される報道の仕事に、こんな誠実な人も携わっているのだという事実は、私の世間への目を開かせてくれた。
彼は、後に、間接的に私の命を救った一人ともなった。


番組放送後、しばらく経っても訪問者の数は一向に減らなかった。
昔から読んでくださっている方なら、うちのブログではコメント欄が匿名の誰かに荒らされることが日常茶飯事になっていたことは、ご存知だと思う。
特に悪質なものが多かったのは、鍵つきコメントだ。罵詈雑言の長文を書き込み続ける複数の匿名に粘着に絡まれ続けた。
番組放送以後は、私にコンタクトを取ってくる人そのものの数が増え、比例して悪意あるコメントも増えた。
例えば、ある鍵コメが「発信は見苦しいですよ。さっさと自殺したらどうですか?」と書いて来たかと思えば、数日更新しないでいると、別の誰かが「読者の気を引きたくて更新してないのでしょう?痛々しい」と書き込んでくる。そんな調子で、そのうちストーカーも現れ、警察署に相談に赴くはめになった。

精神のバランスを欠く時間が増えた。
プライベートな日記で苦しみを吐露した。ブログ友達に手伝ってもらって、荒しコメントの論理分析を必死でやった。それでも耐え切れず意識は朦朧とし、ODし、ダウンを繰り返した。

生きるために書いているブログで、生きる気力を支えられ、生きる気力を奪われる。
でも、書くことをやめるわけにはいかない。
孤独だった。

<⇒2に続く>




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治療日記 | trackback(0) | comment(5) |


2014/04/06 (Sun) ケンタッキーのストライプ - リストカット -

20140406.jpg


部屋を掃除していたら、左手首に擦り傷を負った。
痛かった。思わず叫び声をあげた。

その瞬間、
「リストカットはいいものだ」
「また切ろうよ」
「この痛みが好き」
「この甘さをもっと味わいたい」
フラッシュバックする感覚に支配されそうになった。
混乱し、狼狽した。

ちょうど拓海とiPhoneのテレビ電話を繋いでいた。
手首を押さえて変な顔をしている私に、拓海がどうした?と訊ねた。

私の話を聞いて、拓海はすぐ言った。
「気分転換に別の話をしようか。俺の持ってるシャツなんだけどさ」
その昔、古着屋で試着したら抜群に似合うシャツがあった。着ていたら周囲の評判も良い。だけど、よくよく見れば、実はファストフード店の制服だったんだ。そんな話をしながらシャツを広げて見せてくれた。
カメラにタグを近づけて、ここにケンタッキーフライドチキンって入ってるんだよ、と拓海が言う。


私は上の空。
手首は、変わらず甘く疼いている。
まるで熟れた性器のようだ。
何ていやらしく、いじらしい誘惑だろう。


相槌のついでにお願いしたら、着てみせてくれた。
既製品のサイズがなかなか合わない彼なのに、オーダーメイドのようにぴったりだった。カメラの前でかしこまっている拓海を見ていたら、おかしくて笑えてきた。
ほんとに似合ってんなー。何でそんなもの持ってるの。ケンタマニアに売ったら高く売れないかな。他愛ないことを言って、ふざけあってケラケラ笑った。
拓海も笑った。

私は、密かに相手の空気を観察するし、言葉や表情の意図を察知しようとする。
拓海の凄いところは、何も計算しないところだ。
彼は、もう私の手首を気にしていない。私の気を逸らそうと考えながらシャツの話をしていない。


冗談を私にツッコまれて、彼はアホみたいにいい顔で笑った。
少し開いたシャツからのぞく雪国育ちの白い肌と、その胸元のほくろが妙にいやらしかった。

手首の傷も甘い疼きも、私と彼の笑い声に塗り重ねられ見えなくなった。



今手首を見ると、少し赤い擦過傷になっている。明日には、すっかり治るだろう。
私の心はもう治っている。




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2014/04/01 (Tue) 指無し姫は死なない

20140401.jpg


4年前、治療と称する洗脳を受けた。
普通のごくありふれた面談方式のカウンセリングだった。
てっきり治療だと思っていた。
常にどこか違和感を抱いてはいた。でも、他に行くところはなかった。
助かりたい一心で通った。

治療者に不信感を抱くのは、自分の<認知の歪み>のせいだと信じた。
治療のせいで狂わされているなんて、考えもしなかった。
10ヶ月後、治療から離れた時には、もう手遅れだった。

カウンセリングルームは、密室だ。
<クライアントの認知の歪み>は、ある種の治療者にかかれば完璧なアリバイになる。


犯人不明の完全犯罪。
犯人は、<認知の歪んだ>私かもしれない。
カウンセラーへの不信は、<ボーダー特有のこき下ろし>かもしれない。
何もかもが分からなくなった。崩壊した。
トラウマから、私はすっかり枯れた植物のようになった。

それでも書くことをやめたくなくて、僅かに生き延びた私の残骸を集め、辛うじて書いた記事だけアップしてきた。
何に苦しんでいるのか、ブログにも書けなかった。説明不足の記事は、読者の方を混乱させたかもしれない。私は、自分に何が起こっているのか全く分かっていなかった。だから、何をどう書いて良いのか見当もつかなかったのだ。

文字にしようとすると言葉が消えてしまう。
ブログを書くため、無理やり自分に暗示をかけて意識を過去に飛ばした。そのせいでフラッシュバックを起こし、泣き喚きながら2つ前の記事などは書いた。
文字通りの悪足掻き。どうしてもこのブログには、ほんとうの私だけを記さねばならない。


枯れてゆく自分を捩じ切るまで絞って、一滴残らず純粋な私を注ぎ込み講演をやった。
心をこめた。なげうった。でも自分の全部には届かなかった。来てくださった方に何と言えば良いか分からなくなった。枯れてゆく。
じわじわ死んでいく自分を前に呆然と立ち尽くすしかできなくなった。

私の声が掠れていく。
消えてしまえば私の心はどこにも痕跡を残せない。
他愛ない言葉すら、出て来るまで異常に時間がかかるようになった。
Ustream放送にTwitter、友人や恋人との会話まで、24時間緘黙傾向に苛まれる日々を4年続けた。
私に何が起こったのか、誰にも分からなかった。自分でも分からなかった。
いつもそうだ。本当に痛いことは、人目につかないところで見えない形で刻まれる。
私の人生は、あと何回こんな馬鹿げた転覆を繰り返すのだろう。


事態はもう永久に変わらないかに思えた。
きっちり4年、変わらなかった。
長かった。多くを失った。


しかし、それも今終わりを迎える。
苦しみと熟考と行動の末、私に何が起こっていたか、はっきり分かった。
もう少しで完全に私を取り戻すことができる。
あとは、このブログに怖くて怖くて書けなかったことを書くだけだ。

関わった人のプライバシーが最大限守られるよう注意する。
記事タイトルは、書きかけの童話タイトルの一部を取った。
主人公の指無し姫は、もう死ななくて良いかもしれない。



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2014/03/29 (Sat) あいのうた





私が生まれることで戦うことが始まって、私は他の世界を知らない。
知らなくてもいいのだ。
世界のかたちは、私をつくらない。

戦うために無駄なものは全部捨てる。
痛みが辻褄を必要とする。
誰だっていいんだ。自分だっていいんだ。
五線紙上のコーダ。無数のピリオド。死肉のマイルストーン。
それが私だって構わない。
倒れて事切れる瞬間、この目の端に生存者のつま先さえ映れば良い。
花や虫や鳥や空や雲はいや。
誰でもいいからひとが良い。
奪うでもなく担うでもなく贖うでもなく、
ただいのちをまっとうすることが、私とあなたを繋ぐだろう。

私の本望は、ただひたすらに戦うことだ。
生きるか死ぬかは問題ではない。
戦うこと。
死ぬまで戦い続けること。
私は私の血に従う。
私は私のために戦い、私のために歌を歌い、私のために奮い立ち、
私のために私を殺し、私のためにリミットまで生きるのだ。


そういうのが、私だった。
私はちゃんと覚えてる。
忘れても忘れても、思い出す。






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プロフィール

美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
講演のご依頼ご相談は、当ブログメールフォームからお願い致します。

診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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