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2007/12/17 (Mon) 強く儚い

2007.12.17_diary.jpg

ある男性が、いる。
年齢は、現在60を越える。

彼は、若い頃から常に誰かと結婚し、常に愛人を何人も持っていた。
彼の女癖を、私は子供のときから見て育った。
ときどき彼の子供と呼ばれる誰かが私の家に遊びに来るが、
毎回顔ぶれは違った。
もちろん母親も、違った。

大人から教えられはしなかったが、子供心に了解した。
男と女の関係というものは、
社会的に許されるものと許されないものがあるらしい。
「愛人」「妾の子」という存在を傍らに置き、私は育った。


彼は、愛人達全てに子供を生ませ、高級マンションや家を買い与え、
誕生日や七五三、成人式まで、分け隔てなく面倒を見ていた。
とても子煩悩な人だった。
彼自身、不遇の子供時代を送り、
しばらく両親を知らず育ったせいもあるかもしれない。
各愛人と別れた後も、愛人に恋人が出来たあとも、
以前と変わらず彼女たちの世話をしていた。
子供たちも皆、片親の苦労を味わった筈だが、彼を慕っていた。


彼は、誰からも人望が厚く、仕事でも有能過ぎるくらい有能だった。
彼が経営する会社は、どんどん大きくなっていった。
私たち家族も、どれだけお世話になったか分からない。
彼には、世間でいわれる「甲斐性」というものがあった。
情が厚く、人のために骨身を惜しまず、正義感が強い人だった。
一時期、暴力団に入ったこともあるが、彼は決断し、抜けた。
けじめとして、彼のかわりに、彼の舎弟が自身の全ての指を切り落とした。
皆、彼を愛していた。
懸命に生きて這い上がってきた人だった。
彼ほどの人を、私は見たことがない。


彼は、数年前、病に倒れた。
妻と別れ、愛人と子供と一緒に暮らす、準備を終えた矢先だった。
命の境を彷徨った後、
半身不随と言語障害が残り、高級完全介護施設に入居した。
夫の浮気を知っていた5番目の妻は、
彼女自身も所謂不倫から始まった「略奪結婚」だったが、
やはり夫の浮気は許せなかった。
リハビリをすれば、仕事に復帰できる可能性もある、と医者から言われたが、
彼女は何やかやと理由をつけ、リハビリを受けさせなかった。
それどこか、倒れた直後、医者が施す生き延びるための処置を断ろうとした。
妻は、動けず言葉も発せなくなった夫の枕元で、夫を罵った。
離婚するつもりだったんだ、こんなお荷物はいらないんだ、
と私たちは聞かされた。
彼自身に会ったとき、彼は私たちの言葉を全て理解していたが、
妻は頑として「彼はもう何もわからないのよ」と繰り返した。
彼が、メロンの屋台売りから始め、作り上げた会社は、
彼女の親類縁者と子供がかわり、経営を始めた。


彼の愛人たちは、すぐに生活に困った。
家財を全て売り払い、皆故郷に帰った。
彼を慕う愛人たちと子供たちは、泣きながら彼に会いたがったが、
妻は一切許さなかった。
まだ、小学生の子供もいた。
彼の最後の子供となった。
自由には父親と会えない境遇であるその子が、
一番父親を慕っていた。
父親である彼も、一番会いたがり、また心配していた。
これからの子供の成長を見守りたかったし、
養育費も学費も色んな相談も、みてやりたかったのだろう。
妻に隠れ、親族が彼の車椅子を押して連れ出し、
子供と会わせてやったことがあった。
彼は、言葉が出ないまま、ただ涙を流し続け、
動かぬ手で幼い息子の手を握った。
幼い息子も、ただただ父親の手を握り、泣き続けた。


彼は、毎日死にたがった。
言語は不自由だが、鬱状態が酷く、食欲もなくした。
自ら死ぬことすら、できない体だ。

ある日、彼の母親が死んだ。
彼の鬱状態が悪化することを恐れ、妻は夫に、
彼の母親が死んだことを告げなかった。
1年後、ようやく母の死を知らされた。
法事に出席した車椅子の彼は、涙を流していたが、
ぼんやりとして、ただ虚ろだった。
親戚たちは、皆人徳ある彼に世話になった者たちだった。
彼らは、彼の麻痺した手を取りさすり、抱きしめ泣いた。
彼は、泣いたが、やはり虚ろだった。


彼は、数ヶ月前、末期癌の宣告を受けた。
実際には、彼の妻が聞き、
手術で摘出できると言った医者に治療を断った。
夫は、いまだ自身の体に起こっていることを知らない。
彼は、何も知らないまま癌に蝕まれ、半身不随の体のまま、
完全介護施設の個室で、鬱と死にたい思いを抱え、ただ日々を送っている。




ある、女性がいる。
年齢は七十を越える。
七十歳になるまで独身を貫き、
相手が亡くなるまで愛人を貫き通した。
彼女は、小さな古い家に住み、
ただひたすら男性の訪れを待つ生活を続けた。
近所では、有名だった。
「おめかけさん」と噂され、
陰のある彼女の背には、常に好奇と嫌悪の目が向けられた。
彼女は一度も結婚することなく、彼の愛人を貫いた。

自由に会えなくても、
不遇の身でも、
社会的保障を受けられないまま年をとっても、
彼が病に倒れ、会えなくなっても、彼を慕い、愛し続けた。

病の果てに彼が亡くなったとき、彼女は毎日泣いた。
涙が枯れるまで泣いた。
通夜にも葬式にも、出ることはできなかった。
それどころか、一度も病床に見舞いに行くこともできず、
看病することも、彼の今わの際に立ち会うことも、
彼の手を握ることも叶わず、
最後に言葉を交わすこともできずに、彼は逝ってしまった。


彼の死後、彼女の元を、彼の家族が訪れた。
遺産目当てなのだろう、と罵り、
お前がいなければ家は平和だったんだ、疫病神、と罵った。
彼女は、何も言い返せなかった。
遺産目当ても何も、彼女には遺産は一切入らなかった。
彼への愛は何よりも強い人だが、
彼女は優しすぎる位に優しく、
自身の分をわきまえて生きてきたようにしか、生きられない。
彼らの前で、ただ俯き黙って座っていることしか出来なかった。


愛した彼の死後、しばらくして、
彼女は新しい恋愛をすることにした。
美しく自分を飾り、颯爽と外へ出ていくようになった。
前より、綺麗になったと周囲は言う。




二つとも、今現在も私の傍らで続いている人生だ。
私自身、不倫を長く経験した。
命がけで愛し、命がけで別れを決意した。
私に不倫の意識はないが、今現在も、
SMという形でやや片足を突っ込んでいる。


子供の頃から、
そして大人になってからも私の傍に存在し続けた不倫という形。
不倫というものについて、色んなことを考えてきた。
良いか悪いか、ではなく、そこに息づく人たちの生き方を考えてきた。
人を愛すること、愛されること、愛と罪が同居すること、
狡さと弱さ、慰めと惰性、幸福と不幸、情熱と虚無、
時間と共に変容せざるを得ない哀しさを、目を逸らさず書いてみたい。


貫くということは、強く儚い。


自身の話を書こうと思ったが、
どうしても頭から離れず、二人の話を書いた。




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comment











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読ませていただきました。思うことをまとめ、また私のブログで書きたいと思います。できたら報告に来ます。

2007/12/17 21:11 | monokuro [ 編集 ]


>>monokuroさん 

いつも、ありがとうございます。
ちょっと怖いです。
自身のブログで書くことは何ともないのに、違う人の意見というものは、このことに限っては、いまだ生傷なだけに、読むだけでも正直、怖いものがあります。
ご連絡頂けましたら、勇気を振り絞り、うかがいますので、よろしくお願いします。(笑)

2007/12/17 21:50 | 美鳥 [ 編集 ]


大丈夫ですよ 

恐がらせてごめんなさい(^人^;)美鳥さんがこわくなるようなものじゃありません(笑)この記事読んで単純な感想だけです。ただ、夜ゆっくり書きたかっただけです。驚かせてすみません(*^_^*)

2007/12/17 22:37 | monokuro [ 編集 ]


>>monokuroさん 

ほんまに? 
ほんまに怖くない?(笑)

”美鳥”と書いて、”チキン”と読みます。
ビビリですみません。

怖くないコメントなら大歓迎です♪
ゆったり構えてお待ちしてます。(笑)
ご連絡、ありがとう!

2007/12/17 22:42 | 美鳥 [ 編集 ]


遅くなりました 

記事書きました。時間ある時にでも来てください。
おまちしてます。

2007/12/18 00:44 | monokuro [ 編集 ]


>>monokuroさん 

眠剤を飲んでから行くと、ろくなことありませんね。
今朝起きて、あなたのブログに書きこまれている自分が書いたらしいコメント見て、びっくりしました。
ジャイアンの歌が「ボエェェ~」だとか、「ワールド・ビジョン・ジャパン」て謎のメモ書いてただとか・・・・アホ丸出しじゃないですか!
あらためて、コメントに参ります。
以後、ボエェェとなっているときは、気をつけます(笑)

2007/12/18 11:40 | 美鳥 [ 編集 ]


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プロフィール

美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
講演のご依頼ご相談は、当ブログメールフォームからお願い致します。

診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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