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2008/10/31 (Fri) 「恋する身体」の人間学 小浜逸郎

「恋する身体」の人間学―シリーズ・人間学〈2〉 (ちくま新書)「恋する身体」の人間学―シリーズ・人間学〈2〉 (ちくま新書)
(2003/06)
小浜 逸郎

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最も敬愛する評論家、小浜逸郎の著書を読了したので、メモとしてアップ。
とにかくベタ惚れに惚れている評論家だ。

帯には「せつなさは、どこから来るのか?」とあったが、これは彼が書いたんじゃない煽り文句に間違いないと思った。この手の評論新書というのは売り上げのためにタイトルや帯が中身と全然違うなんてことが、ままある。


実際は、恋愛には殆ど触れず、一見硬い印象を受ける。

冒頭から、プラトンやデカルトに始まり、発達心理学、絵画表現、短歌、ソシュール、バタイユ、フロイト、おおよその人間が辿ってきた「身体と情緒」を巡る哲学、思想を引っくり返して問題点を指摘した上で、身体と情緒と言語の関係性を明快に述べている。
一冊で世界中の思想、哲学をおおよそ総ざらいできる点が、お得感満載だ。


あらゆる社会問題をテーマに評論を書いてきた彼だが、一貫して彼が考察を深めているのは「エロス(他者とのかけがえのない関わり。「性愛」としてのエロスではなく、家族や配偶者や恋人や友人関係を含む親しい関わり全般を指す)」。
彼が一貫して論じ続けている「共感存在としての人間」について語られた人間学の入門書という印象だろうか。

章立てだけでも面白いものがあったので、以下に並べてみる。

第1章 哲学が苦手としてきたテーマ ?身体と情緒
第2章 人間は動物の一種だが、ただの動物ではない
第3章 心とは「はたらき」である
第4章 身体とは「意味」の体系である
第5章 情緒とは「開かれ」の意識である
第6章 「意味する」とは何を意味するのか
第7章 言語の本質とは何か
第8章 身体と情緒の「意味」性
第9章 性愛感情とは何か
第10章人はなぜ恋をするのか


列挙すると何やら小難しくも見えるが、読み始めると止まらない面白さだった。
小浜逸郎は、べらぼうに頭が良くて人間臭く、感受性も高く、思想家として切り口が鋭く、論理的であり同時に文学的な評論家だ。
その絶妙なバランス感覚に、私は強烈に憧れ魅かれて読み続けている。


第9章「性愛感情とは何か」の中の、一部を抜粋してみる。
「すばらしく」かつ「いやらしい」性愛の世界に言及している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
性愛の領域は、「すばらしいこと(陶酔)」と「いやらしいこと(卑猥)」とに極端に分裂したあり方として私たちに感知されています。
(中略)
 これは不思議なことですね。私は性に目覚めた思春期の頃から、このことが不思議でしようがありませんでした。こういう分裂した世界は他にありませんから。
 一方では、隠された秘め事であるから、みだりに公開してはならないとされ、他方では、これは素晴らしいことだと言われる。たとえば皇室で皇子が誕生したとき。(中略)誕生する前に何が行われたのかは明らかですね。誰も表だって口にはしませんけれど。
 それが隠されたことであるのを皆が前提とし、結婚や子どもの誕生を神聖なこととして祭り上げる。人間が関心を寄せざるを得ないことがらが、特殊なタブー感覚によって、まじめで厳粛なこととしてとらえられる一方、あたかもその反動のように、にやにやさせるような、いやらしいこととしてもとられられるわけです。私たちは、性愛領域に対して、いつもこうした限定、一種の二重になったモードの使い分けをしながら、かかわっています。
 なぜ性愛の世界だけがこうなっているのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上記は、私が幾度も考えてきたことそのものだったので、興味深かった。
結婚し一人目を生んだ友達が、「二人目が欲しいけど出来ない」と雑談の延長で話してきたことがあった。そのとき、言葉に出来ない違和感を感じた。
これは、クリスマスイブを「聖夜」と呼び、「きよしこの夜」や讃美歌が流れる一方で、日本中のホテルがカップルたちで満室と聞くときの感覚と似ていた。
もしくは、保健体育の時間に「いやらしくない。大切なことです」といって、セックスについてクソ真面目に教えられたときの空気にも似ている。

すばらしいことなのか、いやらしいことなのか良く分からない、何やら口を閉ざしているのが無難のようにも思われる、性愛の世界は確かに不可思議だ。
その不可思議さに惑わされているような気がして、私は積極的に性について考えてきた。
受動的ではなく能動的に性と関わることで、性コンプレックスを克服しようとしてきた。
理屈ではない、自分の身体を通して実感したことだけを集めて、自分なりの答えが出せたなら、女として生まれた私を脅かす性の世界を征服し、不安や恐怖から解放されるのだと考えてきた。その延長線上に、SM遊戯はあるのだと思う。


SMについて話しているときが一番目が輝くよね、などと友人から言われる。
小浜氏が書いているように、確かに性愛の世界は二重構造になっているお陰で、私の話は友人間で「ネタ」として通用するのだろう。すばらしくもいやらしい性の世界を、人間の習性として語ることで二極に跨ることが可能なのかもしれない。
ちなみに、性についてオープンに語る割に、聞くのも生理的に受け付けない性的な話題が私には結構ある。
その違いがよく分からなかったのだが、今回小浜氏の論を見てみれば、私はどうやら、この二重構造、モードを使い分けられない人との性的な会話に生理的嫌悪を抱くようだ。


といった性愛に関する記述が、この本の必ずしもメインではない。

「情緒(心)」なるものが個別的で有限な身体のうちに閉じこめられてあると感じ」続ける人間という存在そのものの命題に、本著は繋がっていく。
「人間というものはいつも自分の個別的な身体を超えた何ものかを求める存在だ」というのが、小浜氏の原理的モチーフだ。
これは私が幼い頃からすぐ傍に感じ続けてきた絶望でもあるような気がしている。そして、誰もが少なからず抱えている不安や枯渇ではないだろうか。

友達がいても、恋人がいても、配偶者がいても、子供がいても「孤独」だと言う人は多い。有限な身体を持つ私たちは、個として保障されると同時に、他者と永久に隔てられる運命も引き受けなければならないからなのかもしれない。


最終章の最後「聖典とアダルトビデオ」の部分が、実は一番小浜氏らしいのではないかと楽しみに読み進めていった。やはり実に彼らしい結びだった。

「下世話な例を挙げますが」と断った上で、ビジネスホテルのシングルルームには、必ず聖書・仏典と有料アダルトチャンネルが置いてあるが、これは何を意味しているか、と問答しているのだ。
私もなるほど皇室のおめでたニュース同様、長年の疑問であったと思った。

小浜氏の答えに納得した。
彼の人間学は、やはり地に足が着いていて面白い。


本著の内容は、翌年に出版された「エロス身体論」に引き継がれている。
こちらでは、私が気になる「母性」「娼婦性」「性差」「病気・死」「労働」まで具体的に考察されているというので、かなり楽しみだ。
実はもう手元にあるので、読書熱が上がってきたら読み始める予定だ。



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こんばんは。 

読んでみたくなりました。

2008/11/01 21:17 | df504 [ 編集 ]


 

私も小浜 逸郎さん好きです。
ぜひ読んでみたい。
図書館リクエストしてみますね。

2008/11/02 05:44 | sereins [ 編集 ]


>>df504さん 

df504さん こんばんは。
読んだ本についてレビューを書くのが苦手です。
小浜先生が好きなあまりに書かずにはいられませんでした。

この著書は本当に入門編といったところで、彼自身も後述しているのですが、曖昧な点があったり不十分です。ある大学での講義をそのまま文に起こしたものなので、不完全な入門となっています。

ここに書かれてあるものも全て1から論を組み立てて完成された「エロス身体論」(平凡社新書)があります。こちらは、彼の集大成ともいえる一冊だと思います。最初からこちらを読まれた方が一石二鳥でよろしいかと思います。

彼の著述に出会ったのは随分前で、「間違いだらけのいじめ論議」という本がきっかけでした。彼が唱えたいじめ論を越えるものに、10年過ぎてもいまだ出会っていません。大変、人間という生き物を、個と集団に分けて考えたり、2つに跨った曖昧なあり方にも丁寧に目を向け生活人としての視点を守り続けている評論家です。「男という不安」という本も、秀逸でした。男性として一読されては面白いかもしれません。

もしお手に取る機会があれば、是非小浜節をどうぞ。

2008/11/12 19:30 | 美鳥 [ 編集 ]


>>sereinsさん 

sereinsさん こんばんは。
ちょっとマイナーな小浜先生。ファンがいらしてびっくりです!そして嬉しいです!

もう彼が教授をつとめている大学に潜入しようかと考えたり、やや心のストーカーと化しています(笑)
こちらの本は、浅いです。
超入門といった感じで、小浜先生を知ってらっしゃるsereinsさんでしたら、本編(?)となる「エロス身体論」を是非おすすめします。
「なぜ人を殺してはいけないのか」も面白かった記憶があります。
是非ぜひ読まれた本でおすすめがありましたら、教えてください。

2008/11/12 19:33 | 美鳥 [ 編集 ]


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プロフィール

美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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