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2008/09/26 (Fri) 青空の種

実家の庭には、毎年夏には青い朝顔が咲く。
この朝顔の種は、何年も前に亡くなった母の知人がくれたものだった。
知人は、白血病で亡くなった。その年の夏も、真っ青な朝顔が毎朝花開いた。
以来、毎年種を大事に取って、毎年、母が植えていた。


知人の三回忌の年、この朝顔の写真を撮って母が知人の母親に手紙を書いた。娘さんから頂いた朝顔が、今も毎年うちの庭で咲いていますと、綴って送った。丁寧な返事が来た。

美しさや悲しみや、在りし日の楽しかったことや、なくしたものを内包して、季節ごとに花開く。
母は、朝顔を見る度に、綺麗ねと顔を綻ばせたが、その後決まって静かに眺めていた。

ある年母は、もう朝顔は植えないと言った。
家族の誰も、気持ちを察し、母の言うまま、その年は種を取らなかった。夏の庭を彩っていた青い朝顔に、私も黙って別れを告げ、蔓を取ってまとめて捨てた。

2008083005.jpg


それから2,3年が経った。
冬のある日、父が偶然、植木の枝の間に一粒の種を見つけた。
数年前に刈り取った朝顔の蔓が、僅かだけ引っかかっていた。あの朝顔の種だった。

種は、枝の上で、何度もの春と夏と秋と冬を越していた。雨に降られ、風に吹かれ、太陽に照り付けられ、雪が覆いかぶさった日も、静かに枝の上に佇んでいたらしかった。


2008083007.jpg

種が死ぬことは、あるのだろうか。
母は、根負けしたようにその年の夏、庭の土に再び種を埋めた。
数年を耐えてきたたった一粒の孤独な種は、まるで去年も一昨年も朝顔であったかのように、変わらず蔓と葉を伸ばし、たくさんの真っ青な花を咲かせた。

以来、毎年庭に真っ青な朝顔が途絶えることなく咲いている。

この朝顔を眺める度に、生きること死ぬことはあまりに曖昧で、よく分からなくなる。
この種を分けてくれた母の知人は、美しく心穏やかで背筋が伸びた謙虚な人だったと聞く。
血液の癌、白血病で死ぬことは苦しいことだろう。けれど、きっと苦しいだけではなかっただろう。

私の祖母は、肺癌で亡くなる直前まで笑っていた。
癌で苦しみ絶望する日もあれば、癌を冗談の種にして家族を笑わせ一緒に笑った日もあった。
母の知人と祖母の死は、どこか重なって見える。
苦しみは過ぎるとその人の性格まで変えてしまう。けれど、変わらないものも最後には残る。

2008083002.jpg


命は、よく分からない。
運命に無力であるように見えて、力強く過去と今を結ぶ。
途切れたようでいて、次の日の朝、ふいに大輪の花を咲かせる。

いわし雲を見ていたら、真夏の真っ青な空が恋しくなった。
朝顔の色だ。

2008003001.jpg


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comment











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祖母を思い出しました。 

もう亡くなったのですが,今でも新宮の実家の茶の間の掘り炬燵に座って新聞を読んでいるような気がします。その光景がまだ克明に浮かびます。
自分は生きているということが確認できますが,目に映る人達は記憶なのか現実なのか夢なのか…ずっと生き続けているような気がします。

2008/09/26 22:24 | df504 [ 編集 ]


 

はじめまして。
あまりにも綺麗な朝顔だったので、コメント書きたくなりました。

初めて青色の朝顔を見ました。
自然の中で青色は空ぐらいだろうと思っていたので、あそこまでの鮮やかな青色には驚きました。

2008/09/26 23:45 | えな [ 編集 ]


>>df504さん 

df504さん こんばんは。
いつも来てくださって、ありがとうございます。

空を見ていると、夏の空が恋しくなり、そして朝顔を思い出し、母の知人を思い出し、祖母を思い出しました。
記憶とは不思議なものです。
「死者も胸の中では生きている」とは、散々聞き飽きてきた言葉ですが、噛み締めると何と味わい深いものだろうと思います。

以前お聞かせ下さったお話を、また思い出しました。ありがとうございます。

私も、祖母の夢をよく見ます。元気だったときの祖母も出てくるし、癌と戦っていたときの祖母も出てきます。どの祖母も現実としか思えず、起きてしばらくは、私は祖母が何年も前に亡くなったことを思い出せずにいます。

確かに私の中で生き続けています。
懐かしく悲しく、けれど今も生きています。
心に沁み入るコメントくださって、ありがとうございました。

2008/09/28 19:39 | 美鳥 [ 編集 ]


>>えなさん 

えなさん こんばんは。はじめまして。
来てくださって、コメントまで書いてくださって、ありがとうございます!

この夏に、実家の庭で撮った写真を、季節はずれかと思いアップし損ねていたのですが、思い出と共にどうしてもアップしたくなりました。

>初めて青色の朝顔を見ました。
自然の中で青色は空ぐらいだろうと思っていたので、あそこまでの鮮やかな青色には驚きました。

趣味で消しゴムはんこを彫ってるのですが、そういえば当然のように朝顔のハンコは赤で押していました。
空のように青いな、とこの朝顔にカメラのレンズを向けたとき、私が思ったことでした。
写真を通して、その感動をえなさんに感じて頂いて嬉しいです。

本気で一眼レフをちゃんと学ぼうと最近頑張っています。今までもちょっとずつアップしたり、こちらの写真とは全くテーマと赴きを変えてサイドブログでアップしていたりしたのですが、写真のアップ頻度を上げようと思っているところでした。

コメント、ありがとうございました。一度でもコメント下さると、本当に励みになります。
また是非遊びに来てください。

2008/09/28 19:46 | 美鳥 [ 編集 ]


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プロフィール

美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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