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2008/09/14 (Sun) さめざめしてる君に歌う

友人Hとは、よく依存や人と人との距離感について話す。
そういう話題は、私にはかなりヘビーだ。
心理的距離が縮まってしまうじゃないか、と会話自体が怖くなる。似た考えを持っていると知ると、ますます怖くなる。共通項を見つけると人は親近感を持つものだが、私は逆に恐怖が増す。
そのせいで気が合うHと話している最中に、これまで解離したこと2度、フラッシュバックで泣き喚いたのが4,5度、情緒不安定で突然泣き出すのも数度。

私は極力迷惑をかけたくないからと、具合が悪くなるとすぐに会話を切り上げることにしている。
突然切っても構わないとHも言う。
ボーダーの症状が出ると、優しい言葉をかけられれば攻撃に転じるし、拒絶や傍観の姿勢を感じると見捨てられ不安で死にたくなる。Hは、具合が悪くても付き合うよと当初言ったが、具合が悪いときに付き合われると私が相手に依存し始めそうで怖いからと断った。
分かった。理解しているから美鳥の都合で途中で電話を切っても自分は全然構わない、安心して切っていい。あとで謝る必要もない、とHが言ってくれた。
私の状態が悪化すれば、すぐに電話を切って距離を取る。それが、とりあえず今できる最善策だ、と合意している。
私が頼んだわけでもないのに、私の人格と、境界性パーソナリティ障害の症状を分けて見てくれているらしい。私がしたくて攻撃したり試したり泣いたり喚いたり死にたくなったりするわけではないことを、なぜか自然と理解してくれている。


昨日は、彼の子供の頃の話を聞いて、フラッシュバックを起こし、過呼吸でぶっ倒れた。
Hの親が、目の前で自殺しようとした時の話を聞いた。告白するように、突然彼が話し始めた。心の準備がなかったことが致命傷になった。
「親が自殺しようとしていたのを見た」と聞いた途端に、感情の制御が利かなくなった。息が出来なくなった。
3分に1人自殺で亡くなり続けている日本だ。私にとっても珍しい話じゃなかった。けれど、フラッシュバックに耐え切れず電話を切った。後で考えれば、Hにとって大切な話の途中で切るのは、Hを過去の記憶の中に一人置き去りにしてしまった気がしたが、どうしようもなかった。
数時間後に繋がった電話で謝った。一人にしてごめんと。Hは切ってくれて構わなかったと言った。自分にとっては過ぎたことだけれど美鳥にとっては何かがまだ過去のことじゃないんだな、と言っただけだった。
近すぎず遠すぎない関係が、心地よいと思った。


私は、人との距離が縮まることを極度に恐れるようになった。自分のボーダーの症状を自覚し、何年も足掻いた結果、そうなった。回復の過渡期だと思っている。
今の私は依存が怖いし、もうこれ以上自分のボーダーの症状で誰のことも傷つけたくないから、誰とも恋愛をしないのがベストじゃないけどベターだと思う、と以前Hに話したことがあった。

美鳥は何にでも目的に前のめりなのに、そこだけは美鳥らしくないんだよな・・・もったいないと思うんだよ、とHは言った。もったいないも何も、ボーダーの私と関わってみれば分かるのに、と考えたが、知っても変わらず私と関わろうとしているのが、Hなのだった。私は口をつぐんだ。

人を傷つけないために距離を置くのがベターだと思いたい美鳥の気持ちは分かるけど、俺はどう考えても、ベターだともベストだとも思えないよ、とHは言う。そうだろうか。本当にそうだろうか。私には、どうしてもベターにしか思えない。
最悪じゃないけど良くもない、ワースだ。人と距離をそこまで取らなきゃいけなことが良いわけがない、本当はそんなことしなくていいんだ、とHは言った。
信頼できる人間が一人でもできたら、そんな覚悟はしなくていいものなんだ。そう言って、寂しそうだった。


そんな私なんかと関わって、Hに何のメリットがあるわけ?
声が自然尖るのを押さえられない。何度訊いても気が済まない。

ACの私は、他人からとても利用されやすかった。誰にも嫌われたくないから、誰にでも習性で媚びる。相手の理想や願望を相手より先に読んで、自己犠牲も厭わず何でも叶えてやる。一言で言えば、とても便利だ。私は、私を殺して生きてきた。気づかずに私は死んでいた。
そのことに気づいた今、もう誰にも都合よく使われたくはないし、私は私を大事にしたい。大事にしない人には、一切興味がない。
私の都合良さにいつかつけこむ気なのか、それとも私が大嫌いなボーダー好きの男なのか。可哀想でドラマチックで弱くて何もできない女が好きな男なのか。

相手の好意的なセリフや態度が、私の中で警鐘となる。この人は、何が目的で私と関わるのだろうと考える。反射的に相手の真意を読もうとしてしまう。
メリットのあることしか人間は、しない。メリットを求めない慈善事業は、すぐに限界が来る。慈善事業には頼らない。碌な目に遭わない。浮ついた偽善には付き合っていられない。私は一人で生きるんだ。いつも自分に言い聞かせる。

Hのみならず異性の友人に、私は必ずこの手の猜疑心を抱かずにはいられないのだ。


もう何度目か分からない同じ質問に、Hは穏やかに答えた。
友人関係はビジネスじゃないんだ、そこにメリットもデメリットもないよ、そんなふうに考えてると、美鳥が追い詰められてしまうよ、苦しくなるよ。

確かにそうだと思った。
私は、無闇な猜疑心にとらわれて、いつも人間不信で肝心な部分を完全に閉ざしている。


黙って考えた。Hの言葉を咀嚼して、恐怖心が薄らいできた。
この人は、力になりたいと言っているが私に転移し自分の身を滅ぼす人ではないのかもしれないと思った。私の心に土足で踏み入ったり、私が恐怖して遠ざけたいものを無理矢理押し付けたりもしない。
境界性パーソナリティ障害や解離性障害やその他諸々を抱えたままの私の、人間性を見ている。病気に関してはサポートしようとしてくれている。

警戒が解けた分、いつもよりたわいもないことを山ほど話した。話している間に日付が変わり、4時近くにまでなった。

仕事で忙しくて洗濯物を干しっぱなしで忘れていた、とHが洗濯物を取り入れた。そのあと静かになった。受話器の向こうから、かすかに鈴の音が聞えてくる気がした。
どこにいるの?と訊いたら、ベランダで涼んでるんだと返ってきた。鈴に聞えたのは、虫の声だった。

涼しくなったね、もう秋なんだねと言ったら、Hが毛布について、何気ない一言を呟いた。
私は、その一言がものすごく気に入った。
突然、小説が書きたくなった。
机に向かって、ノートを開き、ペンを握った。瞬間、書き始めていた。
真夜中のベランダで、ペンの音がする、と受話器の向こうからHの小声が聞えた。
私は、黙ってペンを走らせた。Hは、私が一節を書き終わるまで、黙って待っていてくれた。

物語が生まれていくのを、ペンで必死で追いかけ書いた。スピードに追いつけず、ペンは罫線をはみ出し、そのうち文字がどこに収まってるかなんて、どうでもよくなり、思わず笑った。楽しくて歓喜で血が沸いた。
失語症で言葉を失った私が、誰にも一言ももう何も伝えることなどなかった私が、小説を書いている。Hと話している。友達と話せる。ブログが書ける。メールが書ける。電話が出来る。

こうして話せていることが凄いことなのかもしれないな、とHが言った。
私は、生まれる言葉を捕まえるのに夢中で、生返事を返した。
受話器の向こう側から、虫の声が聞えていた。
静かにハイな明け方だ。



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Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

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