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2007/11/22 (Thu) 奇形の臍の緒

私が正常だと思っていた家庭が異常だと気付いた。
私が育った家庭には、愛情が満ちていたのではなく、
執着で満ちていたのだと気付いた。
知りたくない事実だったから、
私は最初の数年、自分で自分の耳をふさいでいた。

あなたの両親に問題がある。
専門家が言っても、私は否定した。
あなたは、家の中で孤独だったんじゃないですか?
訊かれても、私はNOと言い続けた。

お父さんとお母さんが間違っている筈がない。
だって、どんな人たちだって、
私の大事なお父さんとお母さんだから。
お父さんとお母さんが間違っていたとして、
どうしてそれを認めないといけないんですか?
認めても、私には何一つ良いことなんて、ない。

私が、悪いんです。
私が、愛されない子だから駄目なんです。


でも、それだけじゃないことを、私は薄々知っていた。
病気になっても、家族の誰も私を顧みなかった。
他人の友人の方が、私を助け、私を励ましてくれた。
病気になったのは、親が教えた信仰をしないせいだと
親は私を恐ろしい言葉で責めた。
病気になったのは、お前が悪いんだ、
死にたいなら死んでしまえ、
信仰しないなら仕方ないから死ね、
仏罰だ、法膀だ、
親から何度も怒鳴られ、
死ねない自分はゴミくず以下だと思った。

でも、なぜか親以外の他人は、
ずっとずっと私に優しくしてくれた。
私なんかに優しくしてくれる彼らに、
私はとても申し訳なくて、
親切にしてもらう度に、
すみません、すみません、と謝った。
謝りながら、代償として私を提供していた。
提供せずには、いられなかった。
親切は、必ず代償を求められる取引だと信じていた。


家族に対して、
最初は単なる違和感のような感覚だけで、数年が経った。
私の家庭内の何が私をどんなふうに作ったのか、
具体的に分かり始めたのは、治療を何年も続けた末のことだった。


自覚したと同時に、恐ろしくなった。
私がこれまで作ってきた、私らしいと思っていた人間関係は、
実は家庭内での人間関係をリピートしていただけだった。
実際、誰と繋がりを持っても、私は孤独だった。
何人の中にいても、私は常に孤独を恐れた。
人から評価されることは、自己の存在価値に直結した。
挨拶を返されないだけで、自分は死に値するゴミだと感じた。
孤独で孤独で、死にそうだった。
でも、にこにこしていた。
人を求めた。
でも、求めていることがばれないように、
人の役に立てるよう、常に心を砕いていた。


私は、自分を殺しかけていた。
両親の奴隷にはなりたくなくて、
どうにか逃れようと、
大海にあてもなく身を投げた。
カウンセラーも精神科医も、
誰も信用できなかった。

家の外の世界を教えてくれたのは、医者たちだ。
けれど、誰もが私を評価する。
彼らの目が、無言で私に判決を下す。
死刑判決を聞きたくなくて、
彼らの手も振りほどき、
私は、必死でもがいた。
泳ぎ方を知らない。
だって、いつも親に手を引いてもらっていた。
家の外は恐ろしいところだ、
決して出ないようにと子供の頃から言われていた。
だから、約束を破った自分は悪い子だと責めた。
もし私が溺れて死んだならば、
それはきっと悪いことをした罰だろうと思った。
罰がいつまでも下らないので、自分を罰した。
罰しても罰しても許されないので、
この海で死ぬことが、
唯一両親への侘びかもしれないとも思った。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
いい子になれなくて、ごめんなさい。
でも、私はもう家では、いらない子だから、
こうするしかない。
あの家にいたら殺されて始末されてしまう。
少しでも長く息をしていたい。
生まれてきたからには、息をしたい。
息ができないのは苦しい。
だから飛び出したけれど、
海は、なんて冷たく恐ろしく無情で、
でも、なんて自由で広いんだろう。
少しずつ少しずつ、
どんなに苦しくても泳いだ分だけ呼吸が出来る。


波を失った海の底で、
15年間呼吸を忘れたMKが、腐乱して漂っている。
彼の体は、長い長い蛇のような管で繋がれている。
両親と、体ごと繋がっている。
思想よりも哲学よりも意志よりも強い、
血と肉で繋がれている。
彼は、優しくて優しくて、生きながら死んだのだ。


彼を引き上げたい。
彼は私だから、私は私を見捨てられない。
でも、彼の手を引いては泳げない。
彼も、私について来ることを望んではいないから、
意味がない。

私は、生きたい。
私に、なりたい。
本当の私に。
一人で生きたい。
ちゃんと、一人の私になりたい。


もう誰にも私は殺させない。
もう私は、死にたくない。
ふと見れば、私の体にも彼と同じ管がある。
長く長く伸びて、血を巡らせている管がある。
おぞましさに、私は絶叫する。
こんな器官を繋いだままで、
私はどうして今まで生きてこられたのか。
私はナイフを振り上げ、滅茶苦茶に斬りつける。


血が通う臍の緒。
この世に生まれたのに、
いまだ両親の血肉の一部でしかない私。
自分の心を知らず、意志を知らず、
本当の寂しさも優しさもあたたかさも知らない私。
からっぽの私。
ただ、生きていたくて血に縋っていた私。
もう、いらない。
欲しくない。
ただの管として生きていくのは、
もう限界。
もう私を放して。


斬りつけて、斬りつけて、
私は泣く、叫ぶ、喚く、痛い、痛い、痛い!
赤い血が、噴出す。
鼓動と一緒に、どんどん海に広がっていく。

死んでしまう。
私が死んでしまう。
切らなきゃ良かった。
ずっと家にいればよかった。
真っ赤な海。
私の血で染まった海。
どっちから来て、どこへ行こうとしていたのか、
海は血で満たされて、流れも温み、
もう何も分からない。
苦しいことしか、分からない。


臍の緒は、私の足、腕、腹、首、目、耳にも絡みつく。
臍の緒ごと、自分を切る。
足、腕、手首、頭、どこも私じゃないから、
切っても切っても、終わらない。

痛ければいい。痛いほどいい。
そのナイフの下に、私がいる証。
皮膚一枚がもどかしい、切る、切る。
血が、叫ぶ。私を責める。
痛いじゃないか!痛い!痛い!
これはお前の一部じゃないか!
お前の血肉じゃないか!
なぜ切る? なぜ?
痛い!痛い!痛い!


私は、皮膚の感覚をなくし、
遠くも近くも見えなくなって、
ただ断続的に訪れる発狂の恐怖や、
溺れ死ぬ猛烈な不安や、
眩暈や発熱や死の予兆に
ただ漂って、漂って、
いつか、痛みや苦しみも一緒に、
私ごと、この海に溶けて消えてしまうことを
漠然と、祈るでもなく願っていた。





今の私は、その少し先にいる。
少しだけ、先。

親と信仰に背いたお前は
必ず地獄に落ちると親は言ったが、
でも、私はまだ生きていて、
この海で溺れ死ぬことはないのだと、もう知っている。

以前は、海しか見えなかった。

泳ぎ続ける私の頭上を、
今は太陽と月が巡るようになり、
朝と夜が、私をあたため、眠らせてくれる。

地獄でもなく天国でもない場所で、

私はまだ、ちゃんと生きている。




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Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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