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2008/04/28 (Mon) 原本アンドロイド 5(2)

※フラッシュバックにご注意ください。
◇原本アンドロイド 5(1) の続きです。
実話を綴っています。シリーズ主旨、過去記事は、最下のリンク集よりどうぞ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Mと一年以上の確執を経て仲直りしたのは、ほんの些細な契機だった。
Mの田舎から送られてきたスイカがたくさんあるというので、
私の部屋へ、Mが持ってきたのだった。
いつものように私の部屋には多くの友達がいて、皆、Mの出現に、
一瞬、しんと静まり返った。

はにかんだ笑顔を浮かべて、Mは、スイカを差し出した。
私は、Mからの嫌がらせに消耗しきっていた。
気味の悪さよりも、有難さが先に立った。
笑顔で、ありがとう、と受け取った。

その日から、Mの態度が変わった。
ぎこちなくも、話しかけてくるようになった。
部屋のドアまでは、自分から訪れるようになった。
その数日後、Mから話があると呼ばれた。

なじられることを覚悟に彼女と対面したが、彼女は突然、
顔を歪めて号泣し始めた。
自分が悪かった、と私に平謝りに謝った。
私は、どうしていいのか分からず、とにかく私も謝った。
きっと寂しい思いをしているだろうと感じていたのに、
Mに対して何も出来ない自分が情けなくて仕方なかった。
二人で、色んなことを話した。
私は、Mの嫌がらせについては、何も言わなかった。
Mも、口にしようとしなかった。
ただ、苛々していて、という説明だったから、
それも無理はないと、私は納得した。


当時の私の対人関係の基本は、「話し合えば分かる」だった。
話し合うことが出来なくなれば破綻するが、
互いに思いあう気持ち、かかわり続けていこうとする気持ちがあれば、
話し合いを重ねることで、必ず分かり合える、前より分かり合える、
それを信念のように固く抱いていた。

私とMは、前以上に仲良くなった。
一方で、1年間、壁一枚向こう側から私へ続けて振るわれた
Mの攻撃性への恐怖は、どうしても拭いきれないものを残した。

Mは、バイト先でも相変わらずの正義感を見せ、
万引きした子供を警察に引き渡さず、自身で延々と何時間も罰を与え、
説教し続けたり、何か機嫌を損ねたら、
一緒に出かけた皆を置いて、数十キロの距離を歩いて帰ってきたりした。
常に、どこか異常な行動が目に付いた。

私は、その頃、猫を飼っていた。
私が主な飼い主で、隣室のMが副飼い主のような位置づけになった。
餌は私かMが買い、猫は毎日眠るときは私の部屋で眠り、
シャンプーなどはMと私で世話をした。
病院へも、Mと二人で連れて行った。

Mは、動物を動物として扱わない人だった。
擬人化し、まるで大人のように動物を扱う。
同様に、人間の子供に対してもそうだった。
街中で泣いている子供を見ると、
「あの子供は、泣いていれば欲求が満たされると思って演技している。
子供はこずるくて大嫌い。殺してやりたい」
と、よく言った。
そういえば「殺してやりたい」は、彼女の口癖だった。
日本という国も憎んでいて、「50歳以上の公務員は全員殺してやりたい」
と、本気で顔を真っ赤にして、よく怒っていたものだ。
他人に、物凄く厳しいところがあった。

あるとき、飼っていた猫にMが魚を持ってきた。
お腹がすいている猫の前で「ホラ、ホラ」と、ちらつかせた。
猫が、我慢できずに手を出そうとすると、叩く。
犬と違って、猫は自我を抑えない動物だ。
Mは、執拗に繰り返した。
私はMに言った。
「お腹すいてるのに、酷いやん。程ほどにしいな」
Mは、「これは躾けだから」と言って、にやにやと笑い、猫をからかい続けた。
猫は、ついに怒った。
焦らされ続けて、頭を叩かれ続け、我慢が限界を超えた。
彼女の手から魚を叩き落し、飛びついた。

Mは、瞬間、形相を変えた。
魚に喰らい付いた猫を、全身で押しつぶすように床に押さえつけた。
ぐふっ、という猫の喉音が聞こえた。
私は、眩暈がした。

猫は、魚を口から放すまいとしながら、必死でもがいた。
Mは、怒鳴った。
「ダメでしょー!? よしって言うまで食べちゃダメでしょーーッ!?」
怒鳴りながら、もがく猫を必死で押さえつけ、抱きかかえた。
猫は、窒息しかけて口を開き、魚を落とした。
必死で爪を出し、Mの腕を引っかいて逃れようとした。
Mは、逆上した。
「コラァァァァ!!! メッ! メッ!!」
グウゥゥ・・・!グゥウウウッ!という、猫の声にならない呻きが部屋に響いた。
私は、眩暈がして呼吸困難に襲われ、あまりの光景に言葉を失った。
Mは、私の方など見てはいない。
「コノヤロゥッ! クソッ! メッ! メーーーッ!!」
Mは、決して猫を離さない。
猫は、恐怖で目を剥いて暴れた。
死に物狂いで爪を立て、刃を立てたために、
Mの服は切り裂かれ、腕から血が流れた。

Mは、真っ赤な顔をして猫を両腕で締め付け続けた。
「負けるかーーーッ! 勝てると思ってんのかーーーッ!」
Mは、猫の耳元で怒鳴り続けた。

私は、震えながらMに言った。
「もう・・・やめなよ。Mが悪いよ。この子、もう何で怒られてるか分かってないよ。
もうしないから、もうやめてよ」
猫が、ビクンビクンと体を硬直させる。
泡を吹きそうだった。
Mは、一切耳を貸そうとしなかった。
猫を、更に万力のように締め上げた。
全力を振り絞るために、Mは文字通り歯を食いしばり、
「うぐぐぐぐぐ・・・ッ」
と唸り、フゥフゥと息を吐きつづけた。

猫が、ついに、恐怖の叫びを上げた。
絶叫だった。
窒息寸前の、潰されそうな全身から絞り上げた絶叫だ。
猫が、失禁した。
あ!とMが声を上げて、ブンブンと猫を振り回した。
室内に、猫の小水の臭いが立ち込めた。
「もうやめて!!」
私は、叫んだ。
Mの耳には、聞こえない。


私は、部屋を飛び出した。
恐ろしかった。
吐き気と眩暈と呼吸困難とパニックで、一秒もその場にいられなかった。

猫が、自分自身に見えた。
Mも、自分自身に見えた。

彼女は、異常だ。
私も、異常なのか。
あんなにも、狂っているのか。


虐待が続く自室を飛び出して、友人Nの部屋に駆け込んだ。
そこで、吐き気をこらえながら、私は号泣した。
猫を助けて、とNに求めた。
Mは怖い、異常だ、と訴えた。
様子を見に行ってくれたNが、猫を離したようだ、と教えてくれた。
部屋に帰ることが、私はできなかった。


翌日、私の部屋に帰ってきた猫を優しく抱き締めて、私は泣いた。
ごめんね、ごめんね、と猫に謝った。
猫に、伝わるわけもなかった。

何が悲しくて、何に怒りを持てばいいのか、誰に何を謝ればいいのか、
私はネコに、Mに、誰かに何が出来るのか、わけが分からず泣いた。
生きていることが、嫌になった。
心の中に渦巻くのは、憎しみだった。
どこへ向けていいか分からない憎しみだけが、濁り、煮えたぎり、
結局は、私という存在に対する憎悪になった。
何も守れない、何とも戦えない自分が、憎くてたまらなかった。


その日、私は自室のドアに鍵をかけた。
柔らかい毛布で猫を包んで、一緒に眠った。
涙と恐怖で、震えが止まらなかった。

Mは、何事もなかったかのように、翌日からまた猫を可愛がり始めた。
猫は、Mを警戒するようになった。
その上目遣いの警戒が、Mの気分を時々逆撫でた。
可愛がるかと思えば、折檻した。

「しつけ」「愛情」と称して行われるMの猫への行為は、
全て、猫の苦痛を無視して行われた。
猫を虐待するときのMの表情、悪を挫くときのMの表情は、
いつも憤怒で真っ赤に紅潮し、目は興奮で濁り、口は喜悦で歪んでいた。
恍惚とさえ、していた。
猫が悲鳴をあげると、Mは、うっとりと微笑を浮かべるのを、
私は何度も目にした。
ああ、これが虐待の連鎖か、と絶望で目の前が真っ暗になった。


Mを、心から憎んだ。
醜い人間だ、と罵倒した。
蔑んだ。
同時にそれは、私自身への憎しみ、罵倒、蔑みへ転化された。
Mと私は、同種の人間だ。
私は、Mを変えねばならない。
猫のためにも、私のためにも、Mのためにも、変えねばならない。
今、私の目の前で行われている虐待を、私は止めることができない。
止められる私にならなければ。
猫を救わなければ。
Mを、救ってやらなければ。



◇原本アンドロイド 5(3) へ続きます。


関連記事
◇私を殺せる唯一のもの(原本アンドロイド主旨紹介)
◇原本アンドロイド 1
◇原本アンドロイド 2 
◇原本アンドロイド 3 
◇原本アンドロイド 4 前編 
◇原本アンドロイド 4 後編
◇原本アンドロイド 5(1)



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2008/04/28 14:30 | [ 編集 ]


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2008/04/28 22:11 | [ 編集 ]


>>鍵コメUちゃんへ 

こんばんは。
コメント、ありがとう。

タイミングは、人それぞれ違うから、無理しないようにと、それだけが心配です。
私の場合は、だけれど、記事に書けるのは、心の中で既に決着が自然とつけられたものだけです。

どちらの立場も分かるという言葉、私は意味が分かります。なぜって、私もMの心が分かったから。私の中にも、あったから。

焦らないでね。
人は植物みたいに、ただ水をやって放置してないと、手を加えすぎると枯れてしまうこともある。
そう思います。
コメント、ありがとう。

2008/05/02 00:53 | 美鳥 [ 編集 ]


>>鍵コメUsへ 

こんばんは。
お返事、遅くなりました。ごめんね。

全部読んでくれて、ありがとう。
ヘビーなのか。これから、ヘビーが始まります。人の愛憎は、生死を左右する限界まで、ふとするとその限界の向こう側まで、気がつくと人間を押し流してしまう。

色んなことを感じてくれて、ありがとう。
うまい言葉は、いりません。
生きて書くことで、私やMやその他大勢の、自覚ない苦しみ、人格に障害を負うことの恐ろしさが、少しでも伝えられるのなら、嬉しいです。

◇4の記事に共感してくれる気持ち、背景、分かりました。経験したから、聞いたとき、私は心底悔しかった。自分のことのように、悔しかった。経験していないのなら、何の言葉も出てこないかもしれない。それは、私に限らず、あなたもそうだと思います。同じ目に遭う誰かがいたら、次はかける言葉を持って向き合えるはずだから。

>泥臭さがプンプンします。いい匂いですね。
続きも期待しています。

何よりの褒め言葉と思いました。このシリーズに関して、特に。泥をひっかぶって、泥の中を這いずりまわり、どうにかこうにか転げまわって生きていた時代です。
死に物狂いだった当時の私が報われるのだとしたら、これを泥臭い、いい匂いと感じ読んでくださるあなたをはじめとする想像もしなかった人たちの存在を感じる瞬間です。
この頃の私は、早く死にたかった。
でも、死ななくて良かった。

コメント、ありがとう。
読んでくれて、ありがとう。

2008/05/02 01:01 | 美鳥 [ 編集 ]


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美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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