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2008/04/15 (Tue) 悪魔は認めない

都合、連日一緒に過ごした友人Nが、昨夜帰っていった。
「またね」と言われても、去り際がいつも寂しい。
絶望的な気分になる。

ボーダー特有の「理由のない強烈な見捨てられ不安」に襲われる。
「帰る」という友人に、「帰るの?」「帰るの?」と、繰り返し聞く。
でも、「帰らないで」とは言えない。
どうしても、言えない。
「帰る」と言われたら、死にたくなるから。
そして、彼は絶対に帰るから。
彼に限らず人は、訪れれば帰るもの。
それが、当たり前のことだ。
そんな当たり前の状況にも、ボーダーである私は、
今生の別れ、永遠に見捨てられるのだ、と絶望で真っ暗になる。


それでも、自分を抑えて抑えて、
ボーダーの衝動をどうにか自分でコントロールして、
じっと動かず彼が去るのを見送っていたのに、
ドアが閉まった瞬間に、私は跳ね起きていた。
走ってドアを開けて、彼の背中に呼びかけた。
彼は、一切振り返らなかった。
聴こえないふりを、したのだと思った。
エレベーターを待たずに、階段を下りていく姿を見て、私はドアを閉じた。
激しい絶望と怒りにかられた。
なぜ振り返ってくれない?
なぜ?

私は、激しく泣くのだろうか、と玄関に立ち尽くして、じっと様子を見た。
少しだけ涙が滲みかけ、でも直後に絶望は緩く凪いでいった。
怒りも悲しみも、絶望も、すぐに溶けて消えてしまった。


変だな、と思った。
思わず、呟いた。


一人になった。
部屋をうろうろしながら、考えた。
なんだろう、この気持ちは、と考えた。
これまで味わったことのない混乱と悲しみと穏やかさと怒りと絶望が
ミックスされて、しばらく自分の心に何が起こっているのか分からず戸惑った。

すごいなー。
彼の後姿を思い出し、その背中に思わず賞賛を送った。
鬼畜だな、と呟いた。
帰るの?と聞き続ける私の気持ちを知っていて、
尚も平然と靴をはいて、ドアの外へ消えていったのだから。
呼びかけても、一切振り返らないなんて。


私のすがりつく声に応え、振り返る男が、何人いただろう。
振り返らなかった人間は、いない。
呼びかけに振り返らないなんて、それほど冷酷な行為はないだろう。
ついさっきまで、あんなに楽しく過ごしていたんだから。


決定的に、今までのパターンから逸脱した状況だった。
振り返ってもらえないことは、初めての体験だった。

私の見捨てられ不安、
確認行為に巻き込まれてくれる人に、愛情を感じてきた。
思いやりだと信じてきた。
でも、なぜかいつも、何度振り向いてもらっても、
私は、すぐにガラクタで玩具で道具で、人間ではなくなってしまう。
何度繰り返し試しても試しても、
確認しても、確認しても、満たされることはなく、
自分の存在意義に自信が持てず、
どうしても自分はゴミに思えて、いつでも不安で死にそうだった。
振り向いてもらえても、傍にいてくれても、
少し視線を逸らされただけで、声をかけてもらえないだけで、
注意が逸れただけで、この世の終わりだと死にたくなったものだった。

永遠に渇きが癒えない。
まるで悪夢だ。
喉が渇いて死にそうだ、と海水を永遠に飲み続ける愚かさに似ている。


Nが振り向かなかったのは、さっさと去るのは、
彼が私をボーダーだと認識しているからだと思った。
決して振り返らなかった彼は、
一体私の心に何をしたのだろうか、と考えた。

立ち尽くしたまま、じっと考え続けた。

混乱し続ける心の芯に、しっかりと手ごたえのある違和感を掴んだ。

不安でもない。
絶望でもない。
怒りでもない。
悲しみでもない。

私が、一人で立っているという実感だった。
私は、一人の人間なのだという自負だった。
自尊心だった。
味わったことのない、誇りある孤独だ。


振り返らなかった彼の方が、振り返る男達よりも、
私をずっとずっと人間扱いしたのだと感じた。
ああ、とため息が漏れた。
振り返ってもらえなかった。
それでよかったのだ、と安堵した。

時間ができたのだと思った。
一緒に過ごした時間があり、会話があり、共有した目的があり、
そして、今は一人の時間がやって来た。
彼に、心から感謝した。


振り返ってもらえないことに、安堵したのは生まれて初めてだ。
感謝が、恋に直結しないのも、生まれて初めてだ。
それ以上でも以下でもない関係だからと、納得できた。
この精神的距離が、今の現実的距離そのものなのだ。
互いに媚びず、互いの領域を侵さない、最も真っ当な距離なのだ。


ボーダーの症状に巻き込みたくない、巻き込まれたくない、
そのことと、親密さや関係の深浅とは、無関係なのだろう。
私が、ボーダーという自身の障害を憎み、
その障害そのものを理解しようとするスタンスにいる彼と、
これは、少なくとも私にとって、糧となる関係に違いない。


境界性人格障害という悪魔の呼びかけに、彼は耳を貸さない。
悪魔の存在を、認めない。
私は、悪魔じゃない。
人間なのだ。

悪魔がいなくなった後、一人の部屋に残された私は、
ノートとペンを手にした。

私は、私でいていいのだと思った。
私にしか書けない言葉を、書き始めた。




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2008/04/15 21:10 | [ 編集 ]


振り返らなかった彼 

境界性人格障害という病気が、少しずつわかりはじめてきた気がします。振り返えらなかった彼、すごいなと思った。私は、まだ美鳥ちゃんのこと理解するには、全然至らなくて。1人の人間として、接していると自分で思っていたけど、全然理解できてない、接していないんだな。私だったら、「帰るの?」と聞かれたら、居続けてしまう。呼ばれたら、振り向いてしまう。美鳥ちゃんと、向き合い理解するには、まだまだ私が未熟すぎるんだな。振り返えらなかった彼が本当の優しさをもっているんだと思った。私は、優しい気持ちを間違えて、認識してました。

2008/04/16 00:12 | あおぞら [ 編集 ]


 

振り返らないやさしさ、初めて気づきました。
いい話を聞いた気分。
私も、見捨てられ不安が強いけど、最近は治まってきたような気がする。
どうしてなのかは解らないけれど。

今は、引越しが決まって、情緒不安定で、心ここにあらずって感じです。

2008/04/16 12:34 | kememilk [ 編集 ]


>>鍵コメUsさんへ 

コメント、ありがとう。
きっと、いつも急いだり答えを求めるよりも、時間をかけて、やっとつかめるものもあると思います。
色んな苦しみを味わってきて、やっと分かることもあるよね。

受け止めてくれて、ありがとう。
ただただ、それだけが願いだったから、届いて良かった。一緒に頑張りたいな、て、いつも思ってるよ。
冷たく枯れてた私に、太陽みたいな言葉をかけてくれた友達がいた。もし今回、あなたに温かさが届いたなら、誰かにペイフォワード、太陽になってあげてね。
戦ってる姿も、休んでる姿も、回復へ向かう姿だから、私の励みになっています。
わざわざコメント、ありがとう。

2008/04/18 20:49 | 美鳥 [ 編集 ]


>>あおぞらさんへ 

あおちゃん こんばんは。

>境界性人格障害という病気が、少しずつわかりはじめてきた気がします。

ありがとう!この言葉が、どれだけ嬉しいか!
ボーダーは、なかなか理解されない。ただの「構ってちゃん」だと言われるのは、それは知識がないから。衝動の理由や、行動原理が少しでも理解されることを祈って、参考になればと記事を書いています。

>私だったら、「帰るの?」と聞かれたら、居続けてしまう。呼ばれたら、振り向いてしまう。

そうだよね。
私も、そう。だから「鬼畜やなぁ・・!」と、一瞬心で罵った(笑)ボーダーをよく知る彼は、帰り際が肝心だということを、よく理解しているみたい。
難しいのは、相手が境界性人格障害だった場合、寂しがる行動が、症状から来るものなのか、それとも性格なのか、正常なのか異常なのか、という点。
そこを見極めるのは、とてもとても難しいことだと思う。

>美鳥ちゃんと、向き合い理解するには、まだまだ私が未熟すぎるんだな。振り返えらなかった彼が本当の優しさをもっているんだと思った。私は、優しい気持ちを間違えて、認識してました。


いやいやいや!
とんでもない。境界例という病気が、正しく伝えられていない、もしくは、病名すら知られていないのが現実だと思います。彼は、基本クールというか、きっちりけじめがつけられ、健常ゆえに恐怖心の本質が感覚として分からない、そんな点からも、ボーダーの行動原理に巻き込まれない人みたい。

私は多分、微妙に回復へ向かってきていて、今の私にしか書けない当事者としての見方もあるのかなぁ。でも、まだまだうまくかけません。
分かろうとしてくれて、ありがとう。
人格障害者にとって、病気の本質を知ってもらえることが、一番の特効薬だと私は信じてます。

2008/04/18 20:57 | 美鳥 [ 編集 ]


>>kememilkさんへ 

kememilkさん こんばんは。
コメント、ありがとう。

最近、調子が悪そうなので心配です。大丈夫?
怪我、読んでて、私まで痛くなったよ。
気をつけてー!

>振り返らないやさしさ、初めて気づきました。
いい話を聞いた気分。

私も、初めての体験、初めて知ったこと。kememilkさんが読んでくれて、「いい話」と言ってくれること、とても嬉しい。自立って、すごく大きくて苦しいテーマです。

>私も、見捨てられ不安が強いけど、最近は治まってきたような気がする。
どうしてなのかは解らないけれど。

大丈夫かな、と正直不安になりました。
すぐ下に、「情緒不安定で心ここにあらず」て書いてるから。離人は私もひどくなると、全部の症状が苦しいのかも分からなくなる。同じ解離症状を持ってるだけに、その感覚が分かって心配です。

見捨てられ不安から立ち直ることも、自立することも、笑うことも、食べることも、全部は、自分を自分で温めてあげて、褒めてあげて、優しく接してあげることから始まると思います。

美味しいもの食べて。
あったかくして。
自分をいっぱい甘やかしてあげてね。
離人と自己懲罰が強くなってるんじゃないかと感じて、とても心配です。

愚痴でも不安でも何でも聞くよ。
思いついたら、声をかけてね。

2008/04/18 21:04 | 美鳥 [ 編集 ]


いつも、気づかせてくれてありがとう 

こんにちは^^
美鳥さんのコメ返し読ませていただいて、ハッとしましたよ(汗)
見捨てられ不安、最近感じない…というよりも、最近、私が遠いみたい。(変な言い方かな?)
常日頃からそうだけど、やっぱり、引越しのストレスなのかな?
あと、「自分の足で歩いていない心もとなさ」があるんでしょうね。

引っ越して、落ち着いたら仕事を探そう…と考えてはいても、問題点に焦点が合わないんだろうな。
この感覚、言葉にできないね。
考えなきゃいけない事が、頭からすり抜けていくような、なんといっていいか解らない感覚です。

引越して数ヶ月は体調崩すだろうから、それも不安。
シックハウス症なのか、今の部屋に住んだ当初は一年間大変だったから。(熱ばっかり出してた)

でも、次のアパートは近くに工場がないから今よりも静かで、目の前は綺麗な川が流れてて、鴨(?)も気持ちよさそうに泳いでたから、気分のいい日には散歩するのが楽しみ^^

今年は誕生日前後一週間が引越しで忙しくなります。(ゴールデンウィークなので、誕生日の日に引越しするんですよ)

そんなこと言ってても、やっぱり実は、引っ越すなんて想像できませんが…。
いまだに、「本当に引っ越すのかなぁ?」とか、口に出しちゃって、「えぇっ!!」とか言われてる(笑)

地に足をつけて歩けるようになることの、どんなに難しいことか。

私の話ばかり書いちゃってごめんね。
では、また^^

2008/04/21 13:19 | kememilk [ 編集 ]


>>kememilkさんへ 

kememilkさん こんばんは。
こちらこそ、再コメントありがとう!

>美鳥さんのコメ返し読ませていただいて、ハッとしましたよ(汗)
見捨てられ不安、最近感じない…というよりも、最近、私が遠いみたい。(変な言い方かな?)

分かります。そうなんじゃないかなーと、同病者として感じました。自分が遠い、て感覚、よく分かる。遠いんだよね。いるにはいるんだけど、5,6メートル離れてる感じ。自分が少し小さく見えるくらいに遠い感じ。私は、よくそんな感じになるよ。

>常日頃からそうだけど、やっぱり、引越しのストレスなのかな?
あと、「自分の足で歩いていない心もとなさ」があるんでしょうね。

変化が意外とストレスになっていても、これがなかなか自覚できないのが、離人の難しいところだね。
自分の足で歩いていない心元なさも、よく分かります。自分の足で歩いてはじめて、足の裏に感じる世界から自分の存在を確認できるから。

>引っ越して、落ち着いたら仕事を探そう…と考えてはいても、問題点に焦点が合わないんだろうな。
この感覚、言葉にできないね。

分かる!分かりすぎるくらいに、分かる!
一番気になっていること、考えると怖いことほど、考えようとすると、ぼんやりと焦点が合わなくなってしまう。本当は怖くてたまらないことなのに、数分後には、すっかり忘れてしまったり。
難しいね。

>考えなきゃいけない事が、頭からすり抜けていくような、なんといっていいか解らない感覚です。

自分らしく生きることが、難しいね。私も、カウンセリングに通っているから、どうにか自分を把握できている感覚があります。そうしないと、自分ひとりだと、自分という人格に底がなくて、何を入れてもスコーンと抜け落ちていく感じがします。

>引越して数ヶ月は体調崩すだろうから、それも不安。
シックハウス症なのか、今の部屋に住んだ当初は一年間大変だったから。(熱ばっかり出してた)

書いていると、不安が具体的になってくるのかな。
数ヶ月も体調を崩すだろう、て思うことは、自覚してるよりも不安だったりすると思います。過去に熱出したことがあるのなら、体が覚えているのかもしれないし。意識と体がバラけてしまうところが、この病気の難しいところだなぁ。

>でも、次のアパートは近くに工場がないから今よりも静かで、目の前は綺麗な川が流れてて、鴨(?)も気持ちよさそうに泳いでたから、気分のいい日には散歩するのが楽しみ^^

鴨!いいね~!
うちの近くにも川があって、鴨もたまに泳いでます。川のそばは、すごく落ち着きます。日の光を浴びて散歩するのは、とても心に良いなぁといつも思う。なかなか出れないけど。部屋だけじゃなくて、まわりの環境も、引越し先は大事だね。

>今年は誕生日前後一週間が引越しで忙しくなります。(ゴールデンウィークなので、誕生日の日に引越しするんですよ)

私より、ちょっと先に年をとるのね(笑)
引越し蕎麦と一緒にバースデーケーキで、新しい部屋で楽しいお祝いできますように。

>そんなこと言ってても、やっぱり実は、引っ越すなんて想像できませんが…。
いまだに、「本当に引っ越すのかなぁ?」とか、口に出しちゃって、「えぇっ!!」とか言われてる(笑)

ええっ!?引っ越すんでしょ?(笑)

>地に足をつけて歩けるようになることの、どんなに難しいことか。

そうだねぇ。難しいですね。
みっともなく泣いたり、自分に当り散らしたり、投げ出したり、励まされてやっと立ったり、でもまた転んだり。
難しいね。

>私の話ばかり書いちゃってごめんね。
では、また^^

いえいえ。色んな話をしてくれるのが、何より嬉しいです。離人感から抜け出ても、また襲ってきたりするけど、ひとつひとつ確認して自分を取り戻せるといいね。私も、たまにぼーっと抜けるからなぁ。
病気の難しさが分かるから、応援してます。

コメント、ありがとう。


2008/04/21 22:46 | 美鳥 [ 編集 ]


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プロフィール

美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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