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2008/03/04 (Tue) 受け入れて

以前少し書いた、数年前の話。

仕事の休憩時間、解離がひどく、
自分が平行移動しているな、とぼんやり感じていたら、
気がついたら、車道に吹っ飛んでいた。
何もないところだった。
なぜそうなったのか、いまだに分からない。

ただただ、解離がひどかった。
意志のない人形みたいに吹っ飛ばされて、全く防御しなかった。
顔から車道に落ちて、数メートル顔でアスファルトを擦って倒れた。
アスファルトで顔の半分、皮膚を持っていかれた。
夏の日照りと摩擦熱で溶けたアスファルトが
真っ黒に私の顔面半分を爛れさせた。

遠くから私を見た女子高生たちが「いったー!」と叫んでいるのが聞こえた。
私は、痛くなかった。
どうでもよかった。
もう駄目だと、何万回目かに思った。
とっくにそう思っていたから、
顔に傷を負ったことは、どうでも良かった。
顔だけでなく、両掌や腕、足、あちこち傷だらけだった。
ズボンが、また破れた。
そのまま仕事に行ったら、驚かれ、病院に行くように言われた。

私は、頑として帰らなかった。
「大丈夫です」と言った。
仕事は、仕事。
私は、ロボットだった。

接客業だった。
皆が、私を好奇の目で見た。
傷は、それからも長い間治らなかった。
私は、仕事を続け、買い物へ行ったり、電車やバスに乗ったり、
必要があれば、その顔であちこち出かけた。

解離が薄れてくると、自分が酷い顔をしていることに気づいた。
私を、皆が好奇の目で見るともなく、見る。
知らないおばさんが、かわいそうに、と無言の哀れみの目を私に向ける。
小さな子供が驚いて、恐怖の目で私を見る。
母親は、子供を小声で叱る。
「見ちゃだめよ」

電車の向かいの席の男子高校生が、ニヤニヤと複数で私を眺める。
小声で何か言っている。
扉が開いて、向かいの連結電車に乗り換える。
私が車両に踏み入るなり、皆が一瞬ぎょっとした顔で私を見つめ、
それから慌てて視線を逸らす。


電車のドアにもたれ、私は俯いて髪で顔を隠す。
私が視線を逸らした途端に、皆が私を見ようとしているのを感じる。
後頭部に感じる、人々の好奇と揶揄と同情の視線。


視線が突き刺さると思いきや、私の心は何にも突き刺さりはしない。
矢のように尖った視線も、生ぬるく包み込もうとする視線も、
どれも私には届かず仕舞いで、表面で乾いて剥がれ落ち、
床にぱらぱら、ぱらぱら、落ちるだけ。
窓の外に流れていく景色を見ながら、
知り合っては通り過ぎてきた人たちのことを思い出した。

腰に一生消えない火傷を負っていた友達だとか。
その友達に向かって
「あなたの傷は見えないからいいじゃない」
と怒鳴ったという片足を引きずっていた友達の友達のこと。
遺伝病、背が異様に高くなって、いずれは失明するかもしれない障害を持った友達。
遺伝しないように結婚を諦めていた友達。
ボランティアスクールの実習で目にした様々な障害を持つ人たちのこと。

腕だけが赤ん坊の大きさしかない老婆のこと。
赤ん坊のサイズの腕を振り回しても、老婆の頭を越えない。
人の体って、どうとでもなる。
想像したこともない体の形は、単純に恐ろしい。
頭上のドライヤーのスイッチが入れられずに私は呼ばれたけれど、
私は予想外の光景に立ち尽くして、恐怖したこと。
あのとき凍り付いて立ち尽くし、老婆を見つめるしかなかった。
私の視線も、こんなふうに、ぱらぱらと彼女の上を撫でて落ちただけ。
もしくは、彼女を突き刺した。



自分の顔を隠さないときもある。
自分の外見など、どうでもいいからだ。
当時、私はとても貧しくて、仕事に着ていくズボンは一本しかなかった。
破れても、繕ってはいていた。
千円もなかった。
お金もなかったし、それ以前に自分の格好など、どうでも良かった。
早く死にたいな、早く消えないかな、私。
そんなことばかり、ぼんやり、ふわふわしていた。


客は、私の顔の傷の理由について知りたがった。
私は、言葉を失って何も答えられない。
そんな私を脇に置いて、客と店主が私の顔の傷を話の種に盛り上がる。
私は、沈黙し、黙々と仕事を続ける。
ズボンは大嫌い。
なのに、破れたズボンしかはかない私。
膝と、それから両内側が破れていた。
縫い合わせても布地が足りなくなった。
だから、いらなくなった黒のソックスを当て布に縫いつけていた。
毎日、それしかはかず、ただ黙々と仕事を続けた。
職場では「屍」「ロボット」「怖い」「死んでいる」「人生終わっている」などと
面と向かってあらゆる人に言われた。
平気だった。


時々、私は一人の部屋で獣になった。
声の限り、金切り声を上げ、唸り声を上げ、息が切れて気絶するまで泣いた。
泣いても泣いても足りないから、自身を痛めつけた。
死ね、死ね、死ね、と自身に向かって呪い続けた。

そのまま外へ飛び出して、片っ端から目に映る人全て、
殺してやりたい日が何度も何度も訪れた。
なぜ殺したいのか、何のために誰を殺したいのか、
私にはまるで分からなかった。

とにかく誰でもいいから死んでくれ!

自分が憎くて憎くて、消えてしまえと思うあまり、
世界まで消えてしまえと願ったのか。
願いすらなかった。
ただ憎かった。
誰を、でもなく、何を、でもなく、純粋な憎しみで発狂寸前だった。
なのに、世界は、いつものっぺりと佇んで、私を嘲笑っているようだった。


時々、我に返ると床や壁に頭を打ちつけ続けていた。
言葉は失っていた。
私は、咆哮しか出なくなった。
獣だ。
仕事に行けば、「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」と沈黙で頷くだけ。
一人の部屋に戻ると、また獣になる。
のたうって暴れまわり、最後の悪あがきに死に物狂いの獣。
早く死んでしまえばいいのに。
どうして生きてるの?
そんなになってまで。

そんな声が聞こえて、私は可笑しくなって笑った。
ほんとだなあ。
どうして生きてるのかなあ。
ゲラゲラ笑った。

そうしていたら、また自分を痛めつけている自分に気づいた。



『受け入れて』 一青窈








この一番最後のシーンだけは、分からない。
私なら、こうは作らない。

あのときの私には、近づこうとする者は一人もいなかった。
ただの一人も、醜い私に寄り添おうとしなかった。


この私自身でさえも。





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美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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