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2008/02/25 (Mon) 賛美の家

私のそばに、あやがいた。
二人で眠剤を前にして、ああでもない、こうでもないと揉めていた。
私は、朝から眠剤を飲むべきじゃない、と言った。
けれど、あやは朝と夜の区別をつけようとせず、
のんびりと、いいじゃないの、と言った。
私は、苛々した。
三錠、あやが取り出して、取り出したのは私なのに、
飲みたくないのに飲んだのか、もうわけが分からなくなった。
夢なのか、現実なのか、気がつくと、夢の中にいた。
どこからが夢だったのか、分からなかった。


あやが出てきた。
ケンジという男と付き合っていた。
冬の山小屋の民宿で、一緒に仕事をしていた。
セックスしようとして、できなかった。
絶対に拒否されるから、したくないと思っていたら、
ケンジが鞭を取り出して、鞭であやの指の間を撫でたから、
あやは我慢できなくなって、ケンジの胸に顔をうずめた。
そうしたら、お前は汚いから、と言って、拒否された。
予想していたけれど、あやは、泣いた。
でも、ケンジはとても優しくて好きだった。
泣いていたら、ケンジが林檎をくれた。
あやは、林檎を無邪気に齧って笑って、機嫌が治った。
ケンジが説明してくれたのだ。
林檎は、もともとは青いんだ、その赤い色や線は、
林檎職人が一つ一つ描いてるんだ。

あやは、感動した。
そんな林檎を齧れることが幸せだと思った。

この村の人が描いてるの?

あやが訊くと、ケンジは笑って頷いた。
ケンジの友達も、そうだよ、と頷いていた。
あやは、林檎の話より、
ケンジとケンジの友達が自分に笑いかけてくれることが嬉しかった。
嬉しいから林檎が美味しかった。
おいしいね。
あやが言うと、ケンジもケンジの友達も笑った。
だから、またあやも笑った。

でも、どこか悲しかった。
山小屋は、いろんな人が訪れる。
まるでアルプスかどこかのように、草原と山がどこまでも続いて美しかった。
ここで生きていこうかな、とあやは思った。
でも、そのうち皆、楽しいお祭に出かけてしまって、誰もいなくなった。
あやも追って出かけたけれど、人ごみのどこを探しても、
ケンジも友達も誰も見つからなかったし、追いつけなかった。
手にしていた食べかけの林檎を、あやはお祭会場のゴミ箱に捨てた。
知らない大人があやを見ていて、あやは自分が何か悪いことをした気がした。


居場所って、ないんだよな、と思った。
思ったのは、夢を見ている私。

夢の中、弟が何か私に話しかけてきた。
私は、怒った。
こいつだけは、絶対に許せない。
私は、弟の両足を摑み、振り回した。
弟は抵抗しようとしたが、私は構わず振り回した。
それから、床へ何度も何度も打ち付けた。
壁にも打ちつけた。
面白くて、たまらなかった。
私の目が、狂乱で血走り、私は自分が笑っているのを感じた。
肉切れのように、弟はボロボロになり、
擦り傷と切り傷、そしてどこが顔でどこからが体なのか分からないくらい、
ぐちゃぐちゃになったから、床に打ちつける度、
びたんびたんと、濡れたタオルのような音がした。
弟の体は、周囲にいる父や、他の誰かの体や壁にも当たった。
皆、楽しそうだった。
だから、私はますます楽しかった。
許すものか、と思った。
めちゃくちゃにしてやる。


あやは、教会に出かけた。
友達数人と。
あやは、どきどきした。
歌と音楽が大好きだから。
賛美歌が始まり、信者の誰もが歌い始めた。
自分も歌いたい、あんなふうに歌いたいな、と思っていたら、
茶色一色の毛皮のキリンが黒いスーツを着ていて、
あやの席までやって来て、12番の箱に行ってください、と言った。
あやは、意味がよく分からなかった。
戸惑っていると、隣の友人が待っていたように席を立った。
彼女は信者じゃないけれど、何か待ち望んでいたような感じだった。
ただ歌が好きなあやと、信仰を望む彼女とは、
違うんだな、とあやは悲しく思った。


怯えながら指示された12番の懺悔BOXの中に入った。
黒い布がかかった窓を開くと、奥に誰かいた。
「あなたは、孤独ゆえに人の中心にいたがっている」
と、占い師のように、男が言った。
よく見ると、何か白い粉を小さなスプーンですくって占っている。
私が何か言う前に、男はさらに言った。
「最近、あなたに大きな変化が訪れた。
しかし、それはもうあなたの元を去ってしまった」

其の通りだ、と私は思った。
希望なんて、どこにもない。
どうすればいいんだろう、と立ち尽くしている間に、
次の信者が二人後ろに並んでいた。
男は出てきて、二人を相手しながら私に微笑を浮かべて何か言った。
どうしようもないんだ、というような内容だった。
私は、ただただ無力感を感じて、その場を後にした。


教会に戻ったら、私の前に懺悔BOXに入って行った友人が、
泣いていて、友人が皆彼女を取り囲んで気遣っていた。
私は、泣ける彼女を見て、彼女にとって良かったのだ、と思った。
それから、取り囲まれている彼女を見て、
でも本当にあれでいいのだろうか、とも思った。
泣いている理由を、懺悔BOXの中にいた男と、彼女自身しか知らず、
友人は知らない。
でも、泣いている彼女の背をさすり、慰め、気遣っている。
それで、本当に、それでいいのか。

私は、その輪の中に入ることが出来なかった。
何か自分だけ異質なものを見ていた。
違う、違う、それは違う。
胸の中に怒りがこみ上げてきた。

泣いている彼女の姿が見えなくなった。
取り巻いていた一人を見つけたので、彼女はどこへ行ったのかと聞いた。
別室で休ませているのだという。
私は、怒りが押さえられなくなった。
私に答えた友人に、何か怒鳴りつけた。
なぜそんなことをするんだ!
それだけは、やっちゃ駄目なのに!どうして!
そんな意味だったと思う。
泣いていた彼女の行方を探した。
教会内は広くて、幾つも部屋があって、見つからない。
私は、怒りに追い立てられながら、ひたすら彼女の姿を探して走った。
見つからない気がした。
でも、怒りで自分を抑えることができなかった。

私には、もう無理なのだ、と思った。
男が言ったように、何かが訪れていたのに、既に去ってしまった。
つかめなかった私が、ただ無力だったからだ。
時間は、戻せない。
いつもこうだ、と思った。
自分に苛々しながら、同時に、これが自然な流れなのだとも思った。
教会の中でも私は異質で、泣くことも慰めることも見つけることもできない。
私は誰かを探すが、誰も私を探さない。
探す必要のない人間、探さなくても存在し続ける人、
必ず戻ってくると信じていられる人たちがいる。
でも、私は誰を見つけることもできないし、誰かに見つけてもらうこともない。
ならばもう無理なのだと考えると、
じゃあ私が存在する意味はあるのだろうかと、首を傾げた。
考えようとするのに賑やかな教会の庭では、バザーが開かれていて、
色とりどりの商品を横目に眺めていると、怒りの理由も分からなくなってきた。
どんどん私が薄まっていく。






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2008/02/25 16:55 | [ 編集 ]


鍵コメKさんへ 

Kさん こんばんは。
不快だなんて、とんでもありません。
こんな記事にコメントくださるのは、真摯なお気持ちで私に接してくださっているからだと思います。ありがとうございます。

なんとなくですが、今回の記事の裏事情(?)をご存知なのでしょうか。
正直、予想外の事態に、私自身戸惑っています。
対人恐怖とは、パブロフの犬、銃口を突きつけられている状態での相手との会話、自身も相手に銃口を突きつけながらの会話、そのように感じます。

長くこの症状と付き合ってきました。
Kさんが仰ってくださるように、本当にこの世にはたくさんの色々な方がいらっしゃいます。
絶望しては、いけないんですよね。

ただ、ただ怖いです。
待たれることも怖い。
そして、待ってくれないことも怖い。
恐怖心は、人を愚かにするようです。
今の私ほど、愚かな人間はいない、などと悲痛な思いにかられます。

1ヶ月も1年も恐怖にかられ続けることは、ない気がします。そのときになっても私に呆れず待ってくれている人がいるとしたら、その友情がまた怖い。
どこまでいっても怖い、「対人恐怖」。

今日になって、少し落ち着いてきました。
冷静になってきた、というよりも、反射的な恐怖心が少し引いてきたような感覚です。

怖い人ばかりではない。
確かにそうですね。
怖い人は、実は怖くないんです。
心温かい人、私に好意を示してくれる人。
そんな人たちが怖い。
そのことも、Kさんは分かってくださってるんですね。
不思議な思いです。
コメント、本当にありがとうございました。

2008/02/27 01:19 | 美鳥 [ 編集 ]


 

事情はわからないんです。
ただ 優しい人や自分に好意を示してくれる人の方が恐いと言うのは何となくわかります。

いつか自分の本質に気付いた時、失望するんじゃないか、去っていくんじゃないか、そうなったら自分はどうなるんだろう…

愚かじゃないですよ。

心をさらけ出して誰かとつきあうことは勇気がいるし、恐怖心も沸き上がると思います。

長年 傷つけられてきたら人を簡単に信じることは難しいだろうし…

悪意を剥き出しの人、内に悪意を持っている人もいるけど、同じように
善意に満ちた人間もいると思います。

いつか人と接する時に、恐怖心が薄れて、心から笑える日が来ることを願っています。

自分を責めないで下さいね。

2008/02/27 09:00 | 花梨 [ 編集 ]


>>花梨さんへ 

>事情はわからないんです。
ただ 優しい人や自分に好意を示してくれる人の方が恐いと言うのは何となくわかります。

そうでしたか。
すみません。
こういう状態に陥ると視野が狭窄しているのを自身で感じます。否定してくださって、ありがたいです。


>いつか自分の本質に気付いた時、失望するんじゃないか、去っていくんじゃないか、そうなったら自分はどうなるんだろう…
愚かじゃないですよ。

まさに。失望されたらどうしよう、去られたらどうしよう、そうなるなら最初から近づくことが怖い。そんな心理です。そこから愚かな数々の取り繕い行為のようなものが発生して、事態をややこしくしていく自分が嫌になります。


>いつか人と接する時に、恐怖心が薄れて、心から笑える日が来ることを願っています。
自分を責めないで下さいね。

ありがとうございます。
自分を責めてるつもりはなく客観的に自身に評価を下しているつもりで、結果、やっぱり自分を責めているようです(笑)
ややこしい!

コメントしづらいこの記事に、花梨さんが何度もコメントくださるのは、花梨さんも似たようなご経験や感覚を乗り越えられてきたからなんでしょうか。
怖いものを、どうやったら怖くないようになれるか。これが、今の私にとっての課題のようです。

コメント、本当にありがとうございました。

2008/02/27 13:56 | 美鳥 [ 編集 ]


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2008/02/27 16:17 | [ 編集 ]


>>鍵コメKさんへ 

Kさん こんにちは。

過去をお話くださって、ありがとうございました。
私が、ほんっとにどうしようもないくらいいじけても、いじけても、なおもコメントくださる理由が分かった気がして、自分のいじけっぷりが恥ずかしくなりました。すみません・・・。

私も男性恐怖症でした。女性に対しては、うまく言えませんが猜疑心みたいなものが強いようです。総合すると、男性も女性も苦手、ということで猫と文鳥に走りがち(笑)

近くに来られると猛ダッシュで走り去りたくなる、て分かります。大分症状が治まってきた最近でも、人とすれ違ったりがしんどいので、人ごみを避けた生活をしています。Kさんが仰るように、これは過去から来るPTSDなんだと思います。

仰ってくださった「小出しに距離を縮めていく」が、まさに私の理想です。
しかし、境界性人格障害のパターンか、ちょっと近づいただけで恐怖心で大騒ぎになったり、ちょっと離れただけで孤独感に襲われ大騒ぎになったり。
ほんまにあほくさいことを、繰り返しています。
もう少し刻んでみて、1単位だったところを、0.1単位くらいにしてみようかと思いました。
いや、それがどういうのか、私はよく分からないんですけど(笑)


旦那様のような方と出会えて、本当に良かったですね。恐れていると、そこにつけこむような男性も多くて、なかなか本当に優しい方と出会えることは難しいように感じます。世界中で、一人だけいればいいんですよね。信じられる誰か。そばにいてくれる誰か。そうしたら、孤独全てとはいわなくても、世界の見え方が全然違ってきますね。
旦那様に出会えなかったら、全ての男性を避けていた、という言葉、よく分かりました。
コメント、いつもありがとうございます。
気にかけてくださって、本当にありがとう。


2008/02/28 11:51 | 美鳥 [ 編集 ]


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プロフィール

美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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