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2012/06/06 (Wed) 帰ってくる小鳥の名前 - 解離性同一性障害  -

20120606.jpg

あの身の捩れるような熱情も、温かく滑らかな肌に触れる指先も、深い安堵の溜息も、小鳥のように一斉に羽ばたいてどこかへ消えてしまった。
大阪に戻ってきたらスイッチがぷっつりと切れるように、安らぐ私ではなく常に張り詰める私になった。これが今までずっと生きてきた今までどおりの私。安らぎよりも、孤独に馴染む。
私は今、ひとりだ。
ひとりでも、全然平気だ。寂しいなんて感じない。


目の前の環境をやり過ごすために、荷物になる感情を自動的に破棄するのかもしれない。
解離性障害の私は私の意識や感情を連続して維持できない。
私が思っているよりも、私はひとりであることに恐怖しているのかもしれない。だから感情を排除しようとするのかもしれない。生きることは、戦うこと。死なずに今日を越えるには、やっぱり私は戦わなくてはならない。弱いままでは戦えない。寂しがっていたら戦えない。

OFFになった感情は、点滅すらしてくれない。


あなたに抱いていた特別な感情がどこかへ消えてしまって、私はまるで別人のようになってしまった。
リハビリの帰り、そんなふうに正直に話したら、受話器越しの拓海は穏やかに「そうか」と言った。
日が暮れかけた大阪の空は、桃色やオレンジに染まって美しい。空気に夜の匂いが混じり始めて、肌がうっすら冷えていった。
どの季節の夕焼けが一番美しいんだっけ?
夕空を眺めながら、そんな話をした。私も拓海も、空に詳しくないから答えを知らない。拓海の半ば苦し紛れの提案で、「夕焼けは、いつの季節のどの夕焼けだって美しい」ということにした。


私は、意識と感情を維持できない。連続した時間から唐突に放り出される。そうしてまた、ふいに戻される。ひょっとしたら戻ってこないかもしれない。何の保証もない。ただ、いま私が私としてここにいるという事実だけがある。
私が忘却しても、私の人格が揺らいでも、記憶が飛んでも時間が飛んでも、大事なものが抜け落ちても、
「そうか」と、ただ一言だけ彼が打つ穏やかな相槌は、私の事実に対する覚悟のようなものであり、期待のようなものでもあり、信頼でいて、願いでもあるのだと思う。

私と拓海は別々の人間だから、私が所有する感情の小鳥を逃がしてしまっても、私は私の分を失うだけだ。それらは勝手に逃げたのか、それとも私が逃がしたのか、私にも判別がつかない。そうして私は、行方を探そうとも思わない。

いつの間にか夕焼けは消え去って、空は夜に変わっていた。家に帰るのが何となく惜しくて、帰路の途中で通りかかった階段に腰掛けて、色んな話をした。どの話をしても、私は大切だったはずの感情を思い出せない。
私の元から飛び立ってしまった小鳥の名と、拓海が大切に慈しんでいる小鳥とは、同じ名を持つのだろうか。もはや手元にない感情を声に織り込むことは、私には出来ない。だから別人のような今の私の声は、彼の耳には少し冷たく響くに違いない。

「それは、やっぱりとても悲しいよ」
寂しさを隠そうともせず、拓海が言った。私に置いてきぼりにされた胸の痛みを押し殺すような、吐息混じりの声だった。その声に胸が痛まないという事実に胸が痛んだ。その時はじめて、私は私から去った感情が早く戻ってくればいいのにと願った。


私と拓海は別々の人間だから、私が所有する感情の小鳥を逃してしまっても、彼は彼の分を守り続けるだろう。
またね、と笑って電話を切ったのは、覚悟のようなものでもあり、期待のようなものでもあり、信頼でいて、願いでもある。
気まぐれで正直で自由で傷つきやすくて、どこへでも行ける。それは温かい小鳥のようだ。
もし手元に戻って来たなら、今度こそ両手で大事に温め守ろうと思う。

そんなふうに思う私は誰なのか分からないまま、不確定な夜を越える。



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人にはいろんな「わたし」がいますよね。
好きな人の体温や声や触られた感触やらで、その人へと会えない寂しさやらで、わたしを一色に染めてしまう恋も素敵だけれど、甘やかだけれど。
自分の生活に戻った時、そういった感情や思いを排除できるのは、あなたの成長の証と感じています。
いろんな私をぶつ切りにして、現実に併せて生きて行くということ、それは私は人間の成熟だと思います(^^)
次に会える時はきっと、時の空白が嘘のようになくなるのかも。素敵ですね。

2012/06/06 10:52 | 冬日向 [ 編集 ]


美鳥>冬日向さんへ 

冬日向さん、こんばんは。コメントありがとうございます!

出会う人によって、自分から引き出される表情って違うんですよね。
自分に好きな人の色が混じる。包まれる。貫かれる。透かされる。放たれる。縛られる。抱擁される。
そんな恋愛が好きです。

解離は残酷な一面があって、その場で最も適応すべき状況を前にすると恋愛心も一切消えてしまうようです。
生きていくのに不必要と言わんばかりの心の激変に、自分でも戸惑います。
ただ不思議なことに、感情が完全になくなってしまったわけではなく、単に感情との接続が切れているのが分かります。
完全な喪失と単なる切断の区別がつくようになったのは、成長かもしれないと思いました。
もしくは、解離が切断したものを私自身がそれでも「失くしたくない」と強く思っているからかもしれません。
自分では全くコントロールできない解離ですが、症状との付き合い方を勉強中です。

> 次に会える時はきっと、時の空白が嘘のようになくなるのかも。素敵ですね。

そうなのかもと思っていたら、意外にも段階的に戻ってきました。
最初に7割、その時は突然激しく泣き出して止まらなくなり困りました。私は感情が怖いのだと思います。恐怖も不安も喜びも幸せも、感情という感情が怖い。だから、解離を起こすのだと思います。

残り3割を思い出す前に、酷い離人感に陥りました。
霧が晴れるように、ゆっくりと離人が薄れてゆき、気がついたら全部戻ってきていました。

解離とどう付き合っていくのか、今後も課題が山積みです。
一緒に向き合ってくれる人ができたことが、心強いです。自分の問題に巻き込んでしまうようで心苦しいのだけど、闘病も恋愛も日常も、焦らず一歩ずつ大切にしたいです。

コメント、ありがとうございました。

2012/07/03 03:02 | 美鳥 [ 編集 ]


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まとめtyaiました【帰ってくる小鳥の名前 - 解離性同一性障害  -】
あの身の捩れるような熱情も、温かく滑らかな肌に触れる指先も、深い安堵の溜息も、小鳥のように一斉に羽ばたいてどこかへ消えてしまった。大阪に戻ってきたらスイッチがぷ //まとめwoネタ速neo 2012/06/08 17:23

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プロフィール

美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
講演のご依頼ご相談は、当ブログメールフォームからお願い致します。

診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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