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2009/05/14 (Thu) 歌うとか叩くとか奏でるとか孤独とか 

20090514.jpg

随分と経ってしまったが、初めて「自分の(所属する)バンド」といえるバンドでの初スタジオ練習でのことだ。

互いに一度も演奏したことのない私達。課題が4曲決まり、2週間後に練習するスタジオも予約した。スコアが郵送で届き、当日まで互いの力量はまるで分からない状態での見切り発車。

2週間の必死の努力といったら、思わず自分を見直してしまった。
私は、自分が好きなことにかけては負けず嫌いなので、人生の半分がバンド経験年数という他のメンバーに劣らず立派に歌ってみせる、と鼻息も荒かった。

しかし、実際にやってみると曲の難易度もさることながら、人に聞かせるために歌ってきたことがない私は、0からの出発というよりもマイナスからの出発となった。
100回練習して1歩進む。が、1回歌う毎に、4,5個の課題を見つける。要するに、歌えば歌うほど課題が増えていく地獄巡り。

歌えると思った次の回では、歌えない駄目だと思う繰り返し。可能と不可能を目まぐるしく行き来する。しかし、とにかくやるしかない。なぜなら私は、お調子者で、出来る算段もないのに、ただ絶対やりたいという願望だけで「必ずやってみせる」と実行前に有言するタイプ。既にバンドメンバーには「時間があれば私に歌えない曲はなくなる」とまで言った。ぽかーんとしていたドラム氏の表情が忘れられない。よくまあ言ったものだ。自分で自分の首を絞めるのが大得意な自虐女なのだ。


100回練習の末に1回は報われるという、喜ぶべきか、情けないと嘆くべきか、ともかくも地味な練習を延々続けた。やりながら、自分って案外ストイックな面もあったのだな、と思った。熱しやすく冷めやすい私が、他人まで巻き込んで結果を出そうとしているのは、かつてない事態だ。

飛ぶように日だけが過ぎた。
プレッシャーのあまり、スタジオ練習の前夜は、ちっとも眠れなかった。
眠剤でどうにか眠りについたものの「こうしてる場合じゃない!」と夜中にガバッと何度も起きる繰り返し。後でメンバーに話したら「そこは寝てたらええやん」と笑われた。確かに。

当日は、落ち着かなくて随分早目に家を出た。予約の数十分前にスタジオに着いてしまった。
メンバーはまだ来てなくて、私は会員登録を済ませたら、やることがなくなった。いつも持ち歩いているカメラで写真を撮ったり、ソファで寝たり、フライヤーを眺めたり、フロントの男性がハンダゴテで何かくっつけているのを眺めた。ギターか何かの部品だろうか。

私しかいなかったロビーに、他のバンドマン達が集まり始めた。
これまで私には縁のなかった人種たち。別の意味でちゃらけた格好の私は、実に浮いていた。が、異質な私に目もくれず、彼らは隅のソファーに座って銘々楽器を取り出したりして話し始めた。
私は、横目で盗み見た。
赤い髪をこれでもかと立ち上げたパンクロッカーのような男性は、有刺鉄線のようなブレスを腕に巻きつけている。ギターパートらしい男性は、常に小さな音で何か弾きつづけている。そうしていないと落ち着かないようだ。何のパートなのか、もう一人は常に足で脳内の音楽のリズムを取っているらしい。そうしながら、次のライブはどこそこに出たいなど音楽の話に熱心だった。


総じて全員、独特の空気をまとっていた。
青白いでもなく、日に焼けているでもなく、内向的でもなく、かといって外向的でもないように見える。これからスタジオに入って奏でる音楽は、とりあえず物静かでないことは確かに思えた。しかしメンバー同士敬語で話し合う姿は、派手な見た目に似合わず実に穏やかだ。
それは、私が出会った今回のメンバーにも共通している。

手遊びにカメラをいじりながら、彼らの空気を一言で表現するなら何だろうと思いを巡らせた。
内包されたエネルギーが常に身体の内側で循環しているのを感じる。彼らの中では、世界が生まれては新しく創られ続けているのかもしれない。肉体という物質に阻まれ抑圧されているが、迸り駆け出す瞬間が訪れることも知っているから、穏やかにその時を待てる人たち。

「ストイック」という言葉がぴったりだなと思った。


彼らがスタジオに入る頃、私のバンドのメンバーたちがやって来た。
約2週間ぶりに会うメンバーをあらためて見てみると、確かにさっきまで眺めていたバンドマンたちと纏っている空気がそっくりだった。
体育会系でもなく、文化系でもなく、ファッションを意識してはいるが過剰に自己主張するでもなく、演奏以外は、存外穏やかな印象を与える人たち。


入ったスタジオは、何だかかなり良いスタジオらしく、バンド経験の長い二人はやたらと感激していた。慣れた二人に教えてもらい、マイクや譜面台やミキサーを準備する。
生の音は、やっぱり凄い。一発で耳がおかしくなった。ドラムの音に内臓を叩かれているようだ。ベースの響きは、私の背骨を弦に変える。これがバンドの楽しみなのだけど。音に圧倒されて、しばらくスタジオ内で安全地帯を探し、マイクを持ってうろうろした。

慣れている二人はとても楽しそうだ。私は、楽しむ余裕なんて殆どなかった。何千回も練習でリピートしたのに、うまく歌えない。現在、メンバーはボーカルの私以外はドラムとベースだけだから、頼りになる音がなくてメロディーラインを捉えるのが難しい。
スタジオの片面は全面の鏡なのだが、できるだけ自分が映らないように端っこに立って歌った。楽しさもあったが、プレッシャーで端から吹っ飛んでいった。

でも、来なきゃよかった、とは思わなかった。やるしかない、しか頭にない。
しかし、なんて音痴だ。とてつもない音痴だ。歌いながら、思わず自分を呪う。歌うことがしんどい。

歌うって何だったっけ?
呼吸は、どうするんだっけ?
どう立ってればいいんだっけ?
どこでブレスして、どう音程を取るんだっけ?

当然のように分かっていたことが分からなくなってきた。

そのくせ、ベース氏に感想を求められれば、「今のは確かにドラムが遅かった」などとストレートに感想を述べる。基本、生意気な性格は変わらないのが我ながら哀しい。素の自分でいることを心掛けていると、そういうことになる。最悪である。
「そうか?もっと早いねんな」と汗だくで素直に反省するドラム氏に、密かに敬意を抱いた。
最後に、遊びでドラム氏がキューティーハニーをロック調にアレンジして叩き、幼馴染のベース氏が合わせて演奏してくれた。お互いに笑っている二人の顔が印象的だった。


2時間の練習は、あっという間に終わった。
ロビーに戻って、スコアや水や煙草、それぞれを広げて音楽のことを話した。

ベース氏は、何度も私に「どうだった?」と訊いてきた。訊かずにはいられない様子だった。
事ある毎に繰り返し同じ質問をされて困惑した。

うまくできたとか出来なかったとか、例えば私は40点だったとか、楽しかったとか楽しくなかったとか、何かありそうなものだが、考えても考えても私の感想は実に曖昧なのだ。

さっきうまくできたところができなくて、できなかったところができたりする。誰かがうまくできても、誰かができていなかったりする。話し合って解決し、すぐにクリアできる課題もあり、これはあと何回かやらないと合わないね、という点もあった。かといって、楽しくないわけではなく、しかしもっとうまくなりたいとも思う。そう思うから、何度でも同じ曲を皆で一緒にやっても飽きることがない。
私は、うまく答えられずに、「楽しかった」だけ繰り返した。


スタジオを出たら、とにかく空腹だった。
帰りに3人でラーメンを食べに行った。
そこでは、バンドと全然関係ない話をして、たくさん笑った。大阪人ならではのボケとツッコミで会話する。私は、どちらにもツッコむという役どころになりつつある。毒舌だからなのか。
男友達って、面白い。あっさりさっぱりしていて私は好きだ。


前日に眠れなかったと私が言った時に「寝とったらええやん」と笑ったのはドラム氏だが、後にベース氏から「あいつは今朝の5時まで叩けん曲延々リピートして聴き続けて、緊張とプレッシャーで寝てなかってんて」と教えてくれた。
そう話してくれたベース氏は、どうやら自分の影の苦労は表に出したくないタイプのようだ。口には出さないから一見余裕があるように見えるけれど、今回の課題曲は難しくて当然なんだといっていた。彼も苦労しているようだ。

皆、個人練習は孤独なのだった。
一緒に演奏するまでは、各々がどこまで完成させているのか分からない。各々のパートに代わりはいないから、自分の持分からは逃げられない。プレッシャーだ。
それらをスタジオで集めて、曲として一つに纏め上げる作業は、1曲につき気が遠くなるほど時間と集中力、仲間と呼吸を合わせる勘が要るようだ。
バンド活動の基本は、意外にも独りで技を磨く職人のような根気強さが土台となっている気がする。


私は、もっともっとうまくなりたいと思った。100努力して1報われる焦れったさも歯がゆさも乗り越えて、もっとうまくなりたい。メンバーの足を引っ張らず、鏡に映る歌っている自分から逃げたりせずに、堂々と歌って、私もメンバーと一緒に楽しめるくらいの余裕が持てるように。

悔しさと楽しさと情熱と執念と向上心が、先へ先へ引っ張ってくれる。
気を抜くとそれらがプレッシャーになり、精神的に引きずり回され疲れ果てる。
でも、それでも、とにかく音楽と歌うことが大好きだ。そのためなら、一人の時間も悪くない。
こんな種類の孤独もあったのか。



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美鳥(みとり)

Author:美鳥(みとり)
被虐待サバイバー。解離性同一性障害、うつ病、対人恐怖症ほか色々闘病中。境界性パーソナリティ障害寛解しました。毎日の光と影を綴ります。生育歴・来歴・病歴・活動はこちらをご覧下さい⇒<はじめに Profile>

講演活動・ユーストリーム放送しています。
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診断名の有無に関わらず、生き辛さを抱える方々と温かい繋がりを目指しています。ご感想ご意見など、お気軽にどうぞ。お待ちしています。

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